2009-11-14

面接で答えにくい質問

「なぜこれを選びましたか?」という問いは、ストレートに答えるとはまりやすいタイプの質問です。

たとえば彼女から「どうして私と付き合ってるの?」と聞かれるとするでしょう。「優しくて可愛いから」という答えは、本心だとしてもちょっとまずい。だってその言葉は、「もっと優しくて可愛い人が現れたら乗り換えるかもしれない」って意味を含んでいるから。

当然、彼女もそう聞き返してくることを覚悟すべきです。それを聞き返してこない良くできた彼女さんは、その不安を胸の中に押し隠してしまっただけかもしれません。

もう15年前になるけど医学部受験したとき、ペーパーテストを通過すると面接があったんだけど、ここで聞かれるに決まっている質問があって、それは「どうして医者になりたいと思ったの?」です。むしろこれを聞かない面接なんてどうかしてる。

正直に「いや、別になりたいと思ってないですけど」と答えたら確実に落とされるであろうことはさすがの僕にもわかる。なんとかもっともらしい答えを用意していく必要がありました。しかしこの質問に、「社会に貢献したいからです」と答えるのはNGです。

だってこんなこと答えたら恐ろしい追撃が来ますよ? 「社会に貢献できる職業はたくさんあるけど? 警察官じゃダメなの?」、とこれは優しい方。「社会に貢献できると思う? 高齢化が進んでるのも医療費が急増してるのも医者がいるからじゃない?」、とこういうことを医学部教授が問いかけてくるんだからなんて答えれば良いんでしょう。

「Aを選んだ理由」を聞かれて「AはBなところが良いから」と答えるのは危険なのです。それを言うためには

  • AはBという特徴が確実にある(医者になれば確実に社会に貢献できる/君は確実に優しくて可愛い
  • A以外の選択肢にはBという特徴がない(他の職業社会に貢献していない/君より優しくて可愛い人はいない)

という2条件を前提にする必要が出てくるからです。そんな前提条件、証明できるわけないじゃないのさ。

だから、前提のいらない答え方をする必要がでてきます。ひとつの方法としては、A(医者という職業彼女)ではなく、自分主語にしたストーリーを語るというやり方があります。

最初の彼女の質問になら、「あのとき、あんなこと言ってくれたでしょ。あれ以来君のことを好きになっちゃったんだ」みたいな。 医学部入試面接だったら、父親だとか命の恩人だとかを挙げて「ああいうドクターに僕もなりたいと思ったんです」、みたいに。

反論がしにくいというのももちろんあるけど、面接みたいな言葉での闘いでは場を自分世界に引きずり込んでしまうのはとても有効なやり方なので、そういう意味でも主観の話に持っていくのは有利です。

ちなみに、親族医者もいないし命を助けられた経験もない僕は、なんのストーリーも用意できませんでした。そこで、国語先生(当時の受験担当)と相談して「医師は、時代が変わっても価値を失わない職業だからです」と「AはBだから」正面突破をしかけることにしました。これ、「価値」の解釈の仕方次第でどうとでもとれる発言。反論に応じて解釈を固定すればなんとかしのぎきれるかな、という作戦です。「AはBだから」で反論に耐えきろうとすれば、この程度の作戦が要求されるわけです。

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