2009-10-19

不倫して消えた親父の話。

坂本教授の「Energy Flow」聞いてたら感傷に浸ってしまい、ふと不倫して消えた親父を思い出した。

あいつピアノが得意だったな。絵も上手かった。料理プロ級。趣味ヨットだった。車の運転も上手い。ユーモアもあった。今思えば、モテないはず無かった。

芸術家肌だった親父は音大を出た後は自分ピアノで当面は食っていけた。

アトリエにも長い事通っていたので、少し生活が苦しくなれば描いた絵を道で売れば収入の足しになった。

料理の腕を買われて高級レストランのコックを務めた時もあった。

ただプロとしてやっていくには、ピアノも絵も料理も実力は中途半端なものだった。

つまり、アマチュアだった。

芸術ってシビア世界だよな。

ピアニストとして食って行く人間なんて一握り。絵描きで食って行くのも同様。自分の店を持つのだって難しい。

結局親父は成り行きでどこかの社長ドライバーになった。

それがオレが生まれた時の話。

その社長病気で倒れると職を失い、今度は介護資格を取って老人ホームに勤めた。

口が上手いので老人達にはモテた。

ただ手取りは50歳の男性が貰うものとしてはあまりにも少なかった。

家ではよく愚痴をこぼし時には暴力を振るった。

過去の栄光も虚しいものかな。才能溢れる青年がそんな姿にまで成り果ててしまった。

家庭内の空気は最悪、親父は家に帰ってこなくなった。しまいには消えた。

今どうしてるのか知る由もないが、養育費が来ない以上死んだものとみなしてる。

言ってしまえば自分母子家庭遺児みたいなもんだ。

母親収入はまぁ底辺オブザ底辺だが、それでも祖父が残してくれた家と同居している祖母の潤沢な年金で何とか平凡な暮らしを送れている。

昔は親父の事を軽蔑してたが、今思うと哀れな一人の男としてオレには映ってならない。

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