2009-07-04

底の浅いエロ漫画についての考察

エロ漫画の巻末漫画を読んで、思った。

エロ漫画家は……いや、漫画家は、大分すると2つに分かれる。

フェチ系」か「変態系」か、だ。

フェチは「自分の好み」をまず追求する。「相手」を余り考えない。自己完結型。

変態は、相手との関わり合いを追及する。それがどんな繋がりであってもいい、いや、むしろ繋がりが変であるほどいい。「○○プレイ」は、ご主人様と奴隷がいて成り立つ。

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例えば靴下。

主人公が少女の靴下をスーハスーハーしちゃうエロ漫画を描く、というのが命題だとする。編集者から「もう次の君の読みきりは靴下って事で決まったから」と断定されたとする。

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変態系」だと、まず困るところから始まる。

靴下?靴下で俺は変態行為が出来るのか?オナニーできるのか?いや、普通じゃ出来ない。普通だと無理だ。

なら、どうする。どこまで堕ちれば俺は靴下と性を結び付けられる?と妄想する。

まず、靴下の匂いをかいでスーハーしてる自分を思い浮かべる。何故スーハーしてるのか?好きな女の子の靴下だから、と補完する。

自分が大好きな少女少女の靴下。でも、単に少女の靴下が手に入っただけじゃ、それでスーハーなんてしない。

じゃあその少女フェロモン体質で、靴下からでさえもフェロモンプンプンで嗅いでるだけでイッちゃいそうになる靴下なんだ、と思う。いやいや、それだと靴下モノじゃなくフェロモン少女モノになりそう、とりあえず思いつかなかった時の保険にしよう、と思い別ルート模索

例えばその少女がイケイケSで、こちらがMで、命令されるとか。「靴下の匂いを嗅ぎながら私の前でオナニーしなさい」とか。ああ、俺は靴下なんかでオナニーしちゃう変態なんだ、少女に命令されてこんな卑しい事を、なんて考える。前より「靴下モノ」に近いな、これもSMメインで靴下サブだから保険にしておいて、別ルートだ。

と、様々な事を考える。

靴下で抜け、というたかが命題1つに対して、真剣妄想する。

圧倒的な妄想の量、その中からやっと1つの漫画ストーリーとして使えるのを持ってくる。

これは妄想の量を自慢しているわけではない。

靴下1つで変態行為を行う事に対して、裏付けが欲しいのだと思う。そして誰かを想っていたいのだと思う。

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フェチ系」はそれが必要ない。

「靴下で欲情なんて当たり前じゃないか」という、悪い言葉で言えば思考停止気味な一言で片付ける。

だから妄想も底が浅いというか「少女の靴下スーハスーハー最高!」な人間がそれをただ描くだけなので、妄想がそもそも要らない。

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どちらがいい、というものではないかも知れない。

俺自身が妄想タイプなので、自分とは違う生き物のフェチ系を排除したい、と幼稚に思ってるのかも知れない。

ただ、俺には、フェチ系の言ってる事は「底が浅い」ように感じてしまう。

そして時代が経つ毎に、変態漫画家は減っていく。フェチ漫画家が増えていく。ノレない話が増えていく。

時代の多様性、と考えればいいのかも知れないが、何か納得できない。

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これは、エロ漫画だけでなく、漫画全般に言える。

好みのシチュエーションやら台詞回しやらを追求し、妄想を深くしなくてもその台詞回しだけでイケちゃうというタイプフェチタイプ

とにかく細部まで妄想しないと気が済まない、最終的に描かないかも知れないけどその世界である事は一応全部妄想してから描く変態タイプ

と分けられると思う。

例えば部活メンバー全員で一斉下校してた時に、とあるカップルがいきなりキスしだしたりする場面があったとしよう。

そこで一様に「えーっ!?」と全員で驚いてしまう、それがフェチ系。とにかくキスが一番名目であり、キス以外の情報は「邪魔」。みんなの前でキスそれが大事

変態系は「えーっ!?」と驚くやつもいれば「ああ、とうとうやっちゃったか」と思うやつもいる「ああ、若いねぇ」と思う先輩もいれば「がーん」なんて片方に思いを寄せてた後輩もいる、とバリエーションを増やす。「キス」が大事なのではなく「キスが及ぼす更なるドキドキ」が大事なのだ。

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そこまで妄想してしまうから、絵じゃ足りなくて漫画にしてしまうわけで。

逆に、フェチ系の方々はよく漫画が描けるな、と思う。たかが○○が大好き、そんなのだけで漫画描いてたら、数作描いたら行き詰まりにならないか?と心配する。

妄想を最初にしておけば、サブルートもたくさん考えてあるし、一人一人にスポットを当てればそこからまた新たなストーリーがいくらでも作成できる。変態であれば漫画を描くのに困らない(絵を描くモチベーションとかそういうので困るかも知れないが)。

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先に書いたが、どちらが優れているというものでは無いんだろうな、と思う。

俺自身はフェチ系にはノれないし底が浅いと感じてしまう。

でも今の世の中、既に漫画フェチ系の時代に入っている。

底が浅い、妄想が足りない作品が多く出回っている。この台詞を使いたいが為に作品全部を歪ませました、なんて公言して自慢する作家もいるぐらいだ。

まぁ、絵が良けりゃそれでいいからなぁ、漫画なんて。

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