さっき一度書いたけどもうちょっと書きなおしてみた。
久しぶりに好きな人ができた。会社の同期だ。
内定式の時からかわいい子がいるな、とは思っていたんだけど、入社式ではもっときれいになっていた。でもその時は特に何も思わなかった。自分よりいい大学出てるし、頭も切れそうだし、なんというか別世界の人のような感じで。
そもそも自分はもてる方ではない。いじめられることはないし、普通なのになんで彼女できないの?と女の子に言われたりもするが(じゃぁおまえがなれよと思ったりするんだけど)、彼女がいたことは今のところない。女性と話すのは別に苦ではない。でも彼女はできない。好きな人はできるけどなかなか進展させられなくて、そうしてるうちに彼氏ができちゃったりとかね。
さて、彼女の話に戻る。
今は席が近いから、毎朝、他愛もないちょっかいを出して話しかけている。結構無茶ぶりをしてもきちんとボールを投げ返してくるし、勉強だけでなく頭のいい人だと思う。頭がいいけど、そのことを特に鼻にかけるわけでもなく、こっちの言ってることを頭から切り捨てることもなく、気付いたらいろいろと話している。別に面白い話でもないだろうに、彼女は驚いたり納得したりしながら聞いてくれている。たぶん聞き上手なんだろう。なんだかいつも自分がすごくしゃべるのがうまくなったような気になってしまう。自分の一風変わった趣味にも驚いた顔をしてあれやこれや聞いてくれたりしたのもなんだか新鮮だった。たいてい僕の趣味を女の子は「女の子みたいな趣味だね」とひとこと言うだけでそれ以上聞いてはくれないものだったから。
断っておくと、別に僕は頭のいい女の子じゃなきゃいやだ、というわけではないし、かわいい子がいいというわけでもない。むしろ失礼かもしれないけれども、僕の話を面白がって聞いてくれる程度の頭のよさがあれば十分だと思っていた。かわいければいいなとは思うけれど、自分の顔のレベルなんてよく分かっているから、たかのぞみもしてなかった。でも、彼女と話していて、頭がいい人がいいとかかわいい子がいいという人の気持ちが少しわかったような気がする。
関係としては良好だと思う。毎日少しずつ会話の時間が長くなっているし、いつも楽しそうに笑ってくれるから。ときどき行動が妙に可愛かったりして、いつもの冷静で理知的なちょっと怖いくらいの態度とのギャップに吹き出してしまうと、ちょっと拗ねた顔をして何を笑っているんだという。いいながら彼女も笑いだす。
友達からこんな話を聞いたら、どうせ話を合わせて付き合ってくれてるだけなんだよ身の程を知れよって言っていたと思う。自分でもそう言い聞かせようとしてる。でも、彼女と話していると、本当に楽しくて、「付き合ってくれてるんだから」と思う瞬間がない。まるで、彼女がいつも自分のことを気にかけてくれていて、少なからずの好意を寄せてくれているような、そんな錯覚をする。
でも、それは錯覚だ。彼女の右手の薬指には指輪が光っている。素っ気ない指輪だし、明らかにペアリングだ。話をしながらいつも目に入る。話をしていない時も彼女の方を見ると、それが目に入る。そのたびに思い知らされる。浮足立った気持ちがどーんと地に落ちてしまう。わかってるんだ。錯覚だってわかってるのに、でも不思議なことにどんどん好きになっていってしまう。彼女は僕と同じ気持ちでいるわけではなくて、ただ楽しく話せる相手がいるってくらいにしか思ってないんだろう(義理で付き合ってくれているとは思いたくない)。あまりプライベートのことは話さないけど、彼氏と行ってるんだろうなという話が出てくることがあるから、彼氏との関係もきっと悪くなくて、楽しんでるんだろうなと思う。そういうのが伝わってくる。
そういう幸せな彼女を邪魔したいとは思わないし、もし僕と浮気するようなことがあったらそれはそれで幻滅しそうだ。幸せでいてほしい。僕のことを好きになんてならないでほしい。
でも、好きになってほしい。こっちを振り向いて欲しい。笑ってほしい、楽しかったって言ってほしい。もっと近くに行きたい、そして彼女にもそう思っていてほしい。そう思っているんだと錯覚してしまう。我ながらかなり気持ちが悪いと思う。どんだけ自信過剰なんだ、彼氏持ちの女の子に好意を寄せられてると勘違いするなんて、と冷静には思うんだけど、彼女がいるとすっかりその気になってしまっている。
彼女が、先週スピッツのCDを借りたと言っていたから、さっきツタヤでかりてきてみた。さっきからHolidayばっかり繰り返し聴いてる。
もしも君に会わなければ もう少しまともだったのに
もしも好きにならなければ 幸せに過ごせたのに
朝焼けの風に吹かれて あてもないのに
君を探そう このまま夕暮れまで
Holiday Holiday Holiday
いつか こんな気持ち悪い人 やめようと思う僕でも
なぜか険しくなるほどに すごく元気になるのです
僕のことか、と思った。草野正宗はほんとよっぽどもてないやつなんだろうな。いちいちぐさぐさくる。
今聞きたくても聞けないケータイのメルアドのことを思ってる。踏み込みたい。踏み込みたくない。好きになりたくない、なってほしくない、でも好きになってしまう。もう少し彼女のことが好きになったら、僕は強引になるんだろうか。それとも何事もなかったように身を引いてしまうんだろうか。辛い。でも楽しい。