今年(1999年)の2月、「卒業旅行」ということで、大学の友達3人と僕の4人で、新潟県の佐渡島に2泊3日の旅行に行った。一応は「卒業旅行」ということになっていたんだけど、卒業するのは僕以外の3人で、その時すでに留年が決まっていた僕にとっては、ただの佐渡島旅行。なんかこう、なんとなくその場の流れで行くことになった。男4人で…。いや、別にスネてるわけじゃないんだけど。「金山掘って、ドカーンとひと山当てるかー!ドンブラコー!ドンブラコー!」とかそういう男っぽい目的は特に無くて、全くただの旅行。
数ある旅行先候補の中から、あのクソ寒い2月という時期にになぜ佐渡島が選ばれたかというと、一緒に行った3人の中の1人、K君のおじさんが、佐渡島でホテルを経営していらっしゃって、おじさんの御好意で「卒業する前に友達を連れて遊びに来なさい。」ということで、ホテルの料金なども特別に安くしてくださって(ホテルに到着して部屋を見て、あんまりにも立派で驚いた。よだれがでちゃった。)、まあそれで、佐渡島旅行ということになった。男4人で…。いや、別にスネてるわけじゃないんだけど。
佐渡島にいる間、特に何をしようっていう目的は無かったんだけど、せっかく佐渡島まで来て、ずっとホテルに缶詰めになってるのもつまんないから、一応佐渡島の「観光名所」と呼ばれている所を、ひととおりまわってみた。
佐渡金山。金山はちょっと楽しみにしてたんだけど、あいにく、愛用のツルハシとヘルメットを持ってくるのを忘れちゃったし、仕方がないから他の3人が金山に入ってる間、1人で外で待っててもよかったんだけど、それじゃあなんとなく薄情な感じだし、とりあえず中に入ってみた。たしか入場料600円くらい取られたと思う。金山に金を取られてしまいました。中に入るとロウ人形が穴を掘ってるんだけど、やっぱつまんないんだよな。「ああ、ロウ人形が穴掘ってるんだなあ」と思った。あたりまえだ。
みそ工場。…まさか佐渡島でみそ工場を見学するとは思わなかった。しかも男4人で…。いや、別にスネてるわけじゃないんだけど。
やっぱりワカメのみそ汁が一番おいしいですね。あと、みそを小さい皿に盛ってつまようじで突っつきながら酒を飲んだら、さびしい気分を味わえて面白いんじゃないか?と夜中に思いついて、実際にためしてみたことがあるんだけど、やっぱり死ぬほどさびしくてゲーゲー吐いてしまった。
ということでみそ工場なんだけど、特別な感想はなかった。「ああ、ここでみそを作ってるんだなあ」と思った。あたりまえだ。連れのS君は、『ここでしか買えない特製みそ』みたいのを買ったんだけど、帰りのフェリー乗り場のお土産屋さんでは、主力商品としてバッチリ売ってた。まあ、観光地のお土産なんてそんなもんだ。
歴史博物館。…ほかに行くとこないのかよって言われそうだけど、その通り。無い。ここも入場料を取るんだけど、さすがにちょっと見る気がしなかったし、車酔いで頭の中がグルグルしてて歴史どころではなかったから外で1人で待ってたんだけど、日本海から吹いてくる風が殺人的に冷たい。煙草に火をつけるのもたいへんだ。車の中で待とうにも、キーを持ってるK君が博物館の中だから、外で待つしかない。入場料払って中に入ってK君にキーをもらってこようかと思ったんだけど、おいおい、それだったらわざわざ車に戻らないで博物館の中にそのままいればいいんじゃないか。なあ、みんな。
佐渡トキ保護センター。朝起きて気がついたらセンターの前におろされていて、オレの感覚的にはその間30秒くらいだったから、(1)あぁ寒い、(2)あぁつらい、(3)あぁ眠い、(4)あぁ帰りたい、(5)あぁ誰かカネ貸してくれ、と切に思った。
センター内にはトキに関するいろいろな資料が展示してあるんだけど、その中に、『ボタンを押せば世界各国のトキの鳴き声が聞けるコーナー』みたいなのがあって、一応全部押してみたんだけど、どこの国のトキの鳴き声も大きな違いがなくて、みんな「グエーッ!」。全然面白くない。センターに入るときに「協力料」っていう名目で、入場料を200円払ったんだけど、お金を取ったからにはちょっとくらいサービスしてほしかったな。ドイツトキのボタンを押したら「グワッヒ!」とか。そのくらいあったっていいじゃないか。
トキなんか保護しないで自然に滅びるのがほんとじゃないかって思ってたから、別に興味もなかったし、一目見れればいいやくらいに思ってたんだけど、実際は一目どころかテレビモニターでしか見れない。トキのオリは保護センターの裏のほうにあって、オリの前にビデオカメラが取り付けてあって、観光客はそのカメラが映したトキを、保護センターの中のモニターで見る。別に生で直接見せてくれたっていいじゃないか。あやしいな。実はもうとっくの昔に死んでるんじゃないか?何年も前に撮ったビデオを流してるだけだったりとか。
あれって実はトキの着ぐるみを着た保護センターの職員なんだって。昼間のパパは、ニッポニアニッポン。あっ、日本代表みたいでちょっとかっこいいかもしれない。
毎朝8時に出勤して、タイムカードを打って、着ぐるみに着替えて「グエーッ!」。疲れて黙ってると無線で「鳴け、鳴け!」って上司に言われて泣く泣く「グエーッ!」。着ぐるみの中にクモかなんかが入っちゃって思わず「ギョエーッ!」。上司が「おお、今日はあいつ、演技に気合が入ってるなあ。」だって。気合じゃなくてクモが入っているんです。
トキが残り1羽になっちゃって、「日本のトキの血を絶やさない為」に中国のトキを呼んで殖やすっていうのは…、ちょっとおかしいぞ。日本のトキの血統を守りたいんだったら、繁殖よりも切腹。ハーフは作らなくていい。
もしも人間とトキの立場が逆になって、オレ1人だけ生き残って、『中国ササキ(メス)』を目の前に連れてこられて、「繁殖しろ!」って言われたら、なんとしても反抗して、最後には自害だ!って思いたいけれど、「ニイハオッ♪繁殖しましょ♪」なんて言われたら、コロッと気が変わったりして…。
あんな情けないキン(トキの名前)のやつは、人間の年齢に直したら100歳を超えてるっていう話だから、どうせあともうちょっとで死んじゃうんだし、費用だってかかるんだから、いっそ焼きトキにして食ってしまおう。その際には『焼きトキ食べれる権』を競売にかけて、景気回復。それか、剥製にしてしまって東京タワーのてっぺんに飾る。色合いもちょうど良さそうだし。「日本のシンボル」的な感じも出るし。で、毎日夜12時に東京タワーの照明が消える時に、「ギョエーッ!」。