ゴトリ。
自分の歩く音が、そんな風に聞こえる。
ある一室の前で立ち止まった自分。
そういえば外に出たのは久しぶりだった。
先週末からずっと引きこもってゲームばかりしていたからな。
遊んでいたのはもっぱら、最近仲間内で送りあっているミニゲームの類で、
いつも適当なつくりで、タイトルや音楽が抜け落ちているものが多かったが、
暇つぶしには十分だった。
昨日尾高先輩から送られてきたニューゲームも、そんな名も無きゲームのひとつだ。
昔なつかしのファミコン風RPGで、音楽もなかなか味わい深い。
週末はすっかりはまり込んでしまった。
どうやらそれはゲームを転送してきた先輩も同じらしく、ここ数日顔を見かけていない。
しかしどうしても先に進めない箇所があり、直接先輩のマンションに聞きにきたというわけだ。
なにせパソコン部のつくるようなゲームだから、ネットに攻略法は載っていまい。
だとすると同じくらいゲームを進めているはずの先輩に聞くのが一番だ。
本当は電話で済ませたかったのだが、いつもどおりお客様の都合によりお支払いされていないようだ。
まあ借りていたDVDもあるし、ちょうどいいか・・・
そう思って、暑い日差しの中マンションの一室までやってきたというわけだ。
しかし、なぜだろう。
妙に足取りが思い。
先に進みたくて気が焦っているはずなのに、
まるで体が何かの危険を感じているかのように、
前に進まない。
ガチャリ。
ようやく扉の前までたどり着いたが、鍵がかかっている。
なんてこった。
コンビニにでも行っているのだろうか。
ガチャガチャ・・・ゴトン。
そう思ったとたん、先輩の家の鍵が空いた。
呼び鈴も鳴らしたんだから、返事くらいしてくれたらいいのに。
部屋の奥からはあのゲームの音がする。
やっぱり先輩もやっていたんだ。
これでやっと先に進める。
ゆっくり、またゴトリと、重たい一歩を踏み出す・・・
累々とした未来に、そのときはまったく気がつけずにいた。
さしずめそれが逃れられない死に向かって一本道の、
ナナシノゲエムだということに。
いっしゅんも、そう、ほんの一ドットたりとも・・・
(体験版の配信は、明日7/8までです)
http://www.nintendo.co.jp/ds/ds_station/dl_service/index.html
http://www.nintendo.co.jp/wii/features/minnano_nintendo_ch/index.html