2008-03-31

実は漫画家になりたかった

春になると転職の話が増えますね。自分の頭が前時代的なのだろうけども、みなさん本当に気軽に転職するなぁと思っている。以下は転職せずに、就業形態を無理やり変えた自分の話。

俺は美大を出てデザイナーとして新卒採用された。ガチガチデザイン会社じゃなくて一般企業デザイン室。そこを選んだのは、業種に特別興味や魅力があったわけではなく、単に定収入と社会人の肩書きが欲しかっただけ。出来れば絵に関する仕事だったらいいな、ぐらいの志望動機だった。何故なら、本当によくある話なのだが、実は漫画家になりたかったからだ。

漫画家にはなりたい、だけど就職せずアシスタントとして修行してデビューを目指すなんてことが出来る程、自分の描いているものに自信が持てなかった。とにかく就職しろという両親を振り切って飛び出す勇気もなかった。働きながら投稿したり、同人誌を描いている間にスカウトが来ないかなーなんて、夢見ている典型的なワナビだったわけだ。

ところが就職してみると、めちゃくちゃ忙しかった。仕事は楽しかったが、毎日終電だったし、それを逃すことも頻繁にあった。休日出勤こそなかったものの、自堕落大学生活を送っていた自分にはキツかった。なにより漫画を描けないことが多大なストレスになっていた。平日の帰宅後1時間プラス土日を使って同人誌はなんとか続けたけども、投稿なんて夢のまた夢。自分はこのまま歳をとっていくのか…と焦りだけが先走った。

2年経った。慢性的な寝不足で体はボロボロ。焦りと劣等感精神的にも限界が来ていたと思う。そんなころ、エロ同人副収入を得ていることが会社にバレた。唯一漫画のことを話していた同期が飲み会上司ポロっと言ってしまったらしい。帰宅後、上司から電話がかかってきて言うには「そんなことをしているから体を壊すんだ、今すぐ漫画を止めろ」。今思えば完全なる逆ギレなのだが、「体を壊したのは、毎日終電のこの会社のせいだろが!普通会社なら余暇漫画くらい出来るんじゃ!もう辞める!」と言って電話を切ってしまった。

その翌日、ガクブルで荷物の整理をしに行くと、思いがけないことに上司はあんな口をきいた自分を引きとめてくれた。入社してからの2年間で、俺がした仕事を評価してくれた。その上、漫画家になって忙しくなるまで、出社日を減らしていいから仕事を続けてくれとまで言ってくれた。もちろん、正社員しかいないこの会社では初のケースとなる特例措置だ。しかもそれをきっかけに、会社全体で就業時間の見直しが入り、遅くても9時には帰宅できるようになった。

ここまでしてもらうと、今度は「時間がない」とか「自信がない」とかいう言い訳が一切出来ないことになる。それからは会社にケツを叩かれる形でなりふり構わず漫画を描いた。エロ同人もやめた。投稿、持ち込みを繰り返して、頂いた時間はほぼ全て漫画にあてた。

結局デビューまでに3年、連載までにさらに1年かかったわけだが、ここまで来れたのも上司会社のおかげだと思っている。この会社普通会社だったら、今もダラダラとエロ同人を描いてニヤニヤスカウトを待っていたことだろう。俺は本当にラッキーだ。今日、週5で2年間、週2で4年間お世話になった会社を、辞める。

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん