2008-02-17

初音ミク同人規制に見るネット著作権侵害作品規制の可能性

最近初音ミクに関して、同版権所持者であるクリプトン社による同人創作規制が話題をよんでいる。

その行動に対して論評の多くは、批判的な立場をとっている。

この点、ねころぐ: 初音ミクの版権について考えるではクリプトンの提示する許諾条件の厳しさを問題とし、初音ミクの迷走ではユーザーの通報が問題とされている。

しかし、こうしたユーザー創作権的なものを認め、その限界を示してみるというクリプトンの行動からは、

むしろ今後の著作権者と同人作者のよりよい関係というものが展望できるのではないか。

これまで多くの場合、著作権者は同人について放置・黙認することで、同人作者の自由を最大限認めてきた。

その結果、特殊な嗜好をもつ者によりキャラクター等の著作物イメージは大きく歪められて流布されることが通例になった。

また、同人作者が金銭的利益を得ることによって、その分著作権者の利益が収奪されるという自体も招いたのである。

これに対して著作権者側が個別に対処することもあったが、その問題事例の膨大さから無駄骨に終わり、いたちごっことなり、効果を示すことがなかった。

他方、今回のクリプトン事例では、当初からユーザー創作の道を許すことを明示し、同人創作物が発表される場においても積極的に自らの存在をアピールしているのである。

こうした取り組みによって、ユーザー側・同人作者側は、否が応にも著作権者であるクリプトン社の存在を自らの場においても認知せざるを得なくなっている。

だからこそ、違反事例に対するユーザー側の積極的な協力という形で、初音ミクイメージの保持・商品競合作品の排除が実効性をもつに至ったのである。

今や、問題事例の多さに対応して、協力的ユーザーの多さという者が期待できるまでになっているのではないか。

以前ならば、同人作者側が著作権者を顧慮して、問題的な作品の創作を自発的に取りやめるというようなことはなかったであろう。

しかし初音ミクではその傾向が見られるというのは画期的なことである。

クリプトン社とユーザー側・同人作者側に、初音ミクイメージについて一定の共通理解が生じているのも見逃せない。

許諾条件が厳しい・あいまいな点があるという指摘については今後の課題かもしれないが、

将来はこうした双方の歩み寄りによって一定の基準が形成されてくるだろう。

こうしたクリプトン社の試みを、他の著作権者も導入することによって、つまり、積極的に同人ユーザー達の存在を認め場に介入することによって、

著作物イメージの保持・商品競合作品の排除ということが著作権者、同人作者ら双方に無理なく行うことが可能になるのではないだろうか。

ところで、このことが数の増減など同人物に与える影響は多少はあろかもしれない。

しかしもともと同人界では同人作者側の全くの放恣というものが許されていたのだから、ある程度の自由が制限されるにしても許容すべきではないだろうか。

ただし、このことは決して同人物の減少を招くということにはならない。

ある意味合法化されることによって、同人の垣根も低くなるだろうし、創作の場も広がるという可能性も残されているのではないか。

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