2007-11-16

携帯電話フォント考 (おもにドコモ端末)

モノクロ液晶世代

携帯電話漢字が表示できるようになったのは、ドコモで言えば P206 HYPER のころだったと思うが、モノクロ液晶機については割愛する。

QCIF 世代

i モードサービスが始まってしばらくすると F502i や大ヒットした N502it といったカラー液晶搭載機が登場する。 ただしこのあたりの機種については画面解像度が 120x120 とか 120x160 などの小サイズで、フォントもモノクロ機と同様のものを使用していた。

ソフトバンクの前身のボーダフォンの前身の J-PHONE写メールサービスを開始するころ、シャープLC フォントを開発している。 LC フォント携帯電話などの低解像度液晶で表示するために作成されたビットマップフォントで、文字ごとに部首バランスを整え、低解像度時につぶれやすい文字のふところ部分を広くとることで視認性を向上させている。 このフォントの見やすさは当時の他機種のフォントとは一線を画しており、後継の LC フォント .C/B を含めてシャープ製端末だけでなく他社製端末にも採用されていた。

LC フォントの登場以外には特筆することはないが、 SO503i のフォントLC フォントに近い丸ゴシックフォントで見やすかった。

順位を付けるとすれば SH>SO>N>P>D>それ以外 と言ったところだろう。

ドコモ以外のキャリア用の端末もシャープ以外は似たり寄ったりで、東芝製端末のフォントもこのころは (解像度が低いため) まだ見れるものだった。

QVGA 世代

ドコモハイエンドが 5xxi シリーズから 900i シリーズに移行して QVGA 液晶スタンダードになりそうなころ、市場でもビットマップフォントの見づらさがクローズアップされるようになってきた。

シャープLC フォントサブピクセル描画技術を盛り込んだ LC フォント .C を開発。 これも実物をひと目見れば誰にでも美麗さがわかるだろう。 LC フォント採用しているという理由で端末を選択するという「フォント買い」まであったとかなかったとか。

のちに、 LC フォントは .B に進化している。 中心線のみのアウトラインデータからフォントを生成するというもので、可変フォントサイズ対応によるビットマップ容量増大を抑える一方で、低解像度向けの描線省略技術を盛り込んでいる。

ドコモ端末では SH と N と P が LC フォント採用。 F と D と SO が相対的にショボく感じられるようになった。

ドコモ以外のキャリアでは、東芝製端末のフォントの汚さが最高潮に達している一方、日立カシオ三洋京セラの端末では独自の丸ゴシックフォント採用して視認性をかなり向上させている。

そして、携帯電話フォントに第三のイノベーションが発生し、 F と D が逆転ホームランをはなつ。 F901iCモリサワ製のアウトラインフォント採用されたのだ。

KeiType と命名されたこのフォントは同社製アウトラインフォント携帯電話向けに最適化したもので、 F901iC に搭載されたモリサワ新ゴは、もはやビットマップフォントは旧世代と言い切って過言ではないと思わせるものだった。

もっとも、 F も D も端末自体がもっさりすぎてフォントの美しさに完全に負けていたが。

QVGA 世代の終盤になって、 P が LC フォントを捨てて丸ゴシックに移行している。 低解像度で見やすくするという思想LC フォント .B は線を 1 ピクセルで描くことを基本としており、フォントサイズを大きくしたときの描線の細さが指摘されていた。 これから訪れる高解像度時代に対応できないと踏んでの移行であろう。

VGA 世代

そして時は現代に移り、 905i シリーズ発表されていよいよ携帯電話液晶VGA (WVGA) がスタンダードとなりつつある。

パナソニックが懸念したとおり、ここに至って LC フォントの天命は完全に尽きた。 ソフトバンクVGA 端末で使用されていた LC フォントアウトライン展開されていたがやはり描線は細く、ビットマップ表示に最適化された部首バランスはかえっていびつに感じられた。

引き続きモリサワフォントを使用している F と D は強い。 アウトラインフォントは解像度が上がれば上がるほど有利に働き、フォントそのものの美しさが強調される。

P は丸ゴシックアウトラインフォントを使用。 N も LC フォントを捨ててアウトラインの丸ゴシック採用した。 SO はモリサワとは違う角ゴシックアウトラインフォント採用している。

シャープも、 LC フォントと名前は付いているが完全に別物の丸ゴシックフォントを使用している。 視認性はかなり改善はされたが、どうも文字間の間隔が開きすぎていて読みにくい感じがする。

キャリアはまだ VGA 機が少ないためアウトライン化の波は押し寄せていない。

東芝端末は最新の 920T (ソフトバンク) で VGA 液晶採用しているが、いまだに QVGA 時代のド汚いフォントを四倍拡大して使用している。 どうかしているとしか思えない。

おわり

遠くない将来に、携帯電話は全キャリア全端末で VGA 以上の液晶になるだろうと思われる。 おそらくすべてアウトラインフォント搭載となり、フォントの優劣を比較という行為も鼻で笑われるような時代になるだろう。

しかし、我々は、東芝製端末のフォントの汚さを未来永劫語り継いでゆかなかければならない(嘘)

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