2007-03-26

http://anond.hatelabo.jp/20070324231559 の続き

「はい、ありがとう

お嬢さんがそういうと、男の眼から生気が消えた。

早く通って、と言われて、裾を踏んづけそうになりながらあわてて男の横を通り抜ける。

「いったいアレは……」

「ここから先は限られた人だけを通すようにしているの。あれは門番。」

そうか、あれは合い言葉のようなものなのか。しかし決められた言葉、と言う割には当たり前のような言葉だったな。

少し違和感が残っていたが、さきほどの驚きにその違和感はかき消されてしまった。

お嬢さんに連れられて入ったのは、大広間、というには狭い部屋だった。いや、それでも自分の認識ではずいぶん大きいのだが。

「もうほとんどメンバーは揃っているわ。あなたが最後」

そういわれてもその部屋にはお嬢さんと僕以外誰もいない。どこか別の部屋にでもいるのだろうか。

「そうよ。まああなたはもう既に目を合わせてると思うけど」

といいつつお嬢さんは丸テーブルにあったグラスを手に取り、僕に渡した。

「少しアルコールが入っているけど、もう運転はしなくていいし」

もともとそれほど飲む方ではなかったけど、この仕事についてから酒は控えていた。いつ仕事を命ぜられるかわからない、という理由もないわけではなかったが、それはどちらかというと言い訳のようなものだ。夕食の時にも酒を出されることはなかったし、この屋敷に住み込みでいると、夜中にコンビニに出るのも何か面倒になる。昼間は昼間で、あの車でコンビニに入るのはどうもためらわれたし、そもそも昼間から酒を買いたいという気分にもならなかった。ところで、お嬢さんも同じ飲み物の入ったグラスを持っているような気がするけど、お嬢さん未成年じゃなかったか?久しぶりの酒だったからか、グラス1杯飲んだだけなのにずいぶん酔いが回るし思考も回る。目は回ってないけど。体はなんか暑いなあ。このドレス脱げるものなら脱ぎたいがこれからパーティで裸になるわけにもいかない。それにしても仮装パーティーでなんで女装なんだ。あれやっぱり酒だよなあ。お嬢さんそれ酒じゃないんですか?

「あら、これにはアルコールは入っていないのよ。慣れればそのほうがいいと思うんだけど、あなたは初めてだし」

なにか変なことを言われたような気がした。そういえばさっき夕食を食べたんだった。パーティで食事がでないなんてことがあるのか?いやそれは自分が"上流階級"のパーティなんてものを見たことがないからだけなのかな。第一この部屋じゃここの使用人が入っただけでいっぱいになっちゃうんじゃないか?まてよここの使用人って僕以外に誰がいたっけ。使用人とお客を集めたってもしかしてこの部屋に入っちゃうんじゃないか?

「初めてだから強すぎたのかもね。早くいったほうがいいわ。」

確かにそうだ。なんだか熱があるような気がする。お嬢さんに手を引っ張られるようにして僕は隣の部屋に入った。

記事への反応 -
  • 徐行速度で門を抜けると、屋敷の雰囲気が、どこかいつもと違うような気がした。 もうライトをつけないといけない時間になっていたからだろう、と僕は思った。こんな時間に運転する...

    • 夕食のあと、すぐに自分の部屋に戻って、例の服を取り出した。僕は固まってしまった。袋から取り出したるはフリフリでフワフワのピンク色した素敵なドレス。お嬢さんは「それを身に...

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            • 「はい、ありがとう」 お嬢さんがそういうと、男の眼から生気が消えた。 早く通って、と言われて、裾を踏んづけそうになりながらあわてて男の横を通り抜ける。 「いったいアレは…...

              • 先ほどの部屋もそう明るくはなかったが、こちらの部屋も薄暗いなあ。あれはランプだろうか。それにしてもこの床は絨毯なのかなんなのか、ものすごくふわふわする。羽毛布団でも敷物...

                • http://anond.hatelabo.jp/20070326124145 ああ、つまりは夢だったわけだ。 もしこの夢、というかこの展開を誰かが見ていたら「それなんてエロゲ」としか言いようのない夢をみていたわけだ。 天...

        •  匿名チャットです。ここでは何を発言しても許されます。のんびりまったりするもよし、真剣に議論するもよし、気にくわなかったら荒らしたっていいんです。 http://anond.hatelabo.jp/?page=...

      • 随時載せたいと思います。 http://b.hatena.ne.jp/entry/2035547

    • みんな忘れてるみたいなので晒してみる。 続きがきになるんだよぉータイトル考えてみたからさー http://anond.hatelabo.jp/20070315145617 http://anond.hatelabo.jp/20070315220748 http://anond.hatelabo.jp/200703161...

    • 古い閂を外し窓を開ける。木々の擦れ合う音と北側の森から吹き下ろす少し冷えた風に包まれ、蒸れた空気に汗ばんだ肌を冷ます。 いや、この汗は屋根裏の暑さだけではないだろう。 ...

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