精神科医から「慢性うつ病」と診断されたのは、今から8年ほど前のこと。
その頃はまだ、SSRIと言えばルボックスの事で、パキシルはまだそれほど有名ではなかった。世間の目は今ほどうつ病に対して寛容ではなく、「うつ病=精神病=キチ○イ」の図式が強かった。そのイメージの悪さもあって誰にも相談できず、こそこそと本やネットで色々調べたり、2ちゃんねるや神経症関連の掲示板で心境を告白したり、そんなことをしていた。毎日ルボックスを飲み、就寝前にはレンドルミン(睡眠導入剤)を飲んだ。二週間に一回は医者に行き薬をもらい、ある時は診断と称されて、心理テストみたいなことをやったり心境を語らされたりした。認知療法や森田療法も独学で勉強し、実践した。そんな生活を二年ほど続けていた。
そんな生活を送っていたら、あることに気づいた。毎日抗うつ薬を飲んでいるにもかかわらず、あまり「良くなった」と実感できないこと。相変わらず「死にたい」と思うこと。気力なんかみなぎってきやしないこと。薬に悪影響が出るからと酒をやめ、薬を毎日欠かさず飲み、認知療法をできるだけ実践するようにしたりと、これだけ「うつ病」とやらに金銭と手間ひまをかけているにもかかわらず、リターンが明らかに少ないような気がしてきた。これだったら、「うつ病」なんて言葉すら知らなかったあの頃のほうが良かったのではないか。そう思うようになった。
そこで、「慢性うつ病」という医者の診断を信じないことにした。抗うつ薬も睡眠導入剤も飲むのをやめて、酒も飲みはじめた。眠れない時(ほぼ毎日だったけど)は酒を飲んで寝ることにした。一生無気力でいいやと開き直り、自殺衝動に駆られたら、抑えずに素直に身を任せることにした。何度挑戦してもダメなので、最近では、「自分が自殺すること」に対して希望が持てなくなってきた。そうしたら、「どうせ死ねないんだから生きるしかない」と、嫌々ながらも認められるようになり、ほんの少しだけどポジにベクトルを向けられるようになった気がする。まだ自殺衝動に駆られることはあるから、もしかしたらうっかり死んでしまうかもしれないけど、それでもいい。うつ病だとかうつ病じゃないとか、そんなことはもうどうでもいい。今生きている俺がいるだけだ。
俺はうつ病を信じない。
俺は、俺自身だけを信じる。