2009-01-30

彼女と手をつないでいるとき、この気持ちが愛なのだろうかと考える。

僕の手の平はけっこう大きくて、彼女の手は低めの背丈によく似合う小ささで、ほとんどすっぽりとおさまってしまう。

すごく寒い日でも僕の体温は高めで、会う前にぎゅーと手袋の中で握りこぶしに力を入れて、冷え性の手を暖めるために準備する。手袋を外して、彼女の頬に手の平を当てて、湯加減はどうですかの美容師気分。さっぶいよーと叫びたおしながら彼女は容赦なく僕の体温を奪い、たまにはにやーと笑ってもくれる。僕の持っているコートの一着に、腰のところのポケットがやたら大きいやつがあって、それを着て出かけた日には彼女の腕ごとポケットにつっこんでしまう。だんだん彼女の手が温かくなってくるのが嬉しくて、でも彼女自身はべつに手をつなぎたくてつないでるわけじゃないらしく、気が済むとすぐに手を離してしまうのでその予感が寂しくもあって、でもとりあえず指先をマッサージしてみたりして。

愛とか、よく分からない。なんとなく好意の最上級、っていう感覚はあるけど他の人が同意できる感覚かどうか。まあそれは置いといたとして、僕が自分の気持ちを愛だと強く確信できたなら、僕はもっと彼女に優しくできるだろうか?

彼女は話下手な僕のメッセージを根気よく汲み取ってくれて、たまにしか発さない(僕自身からすればイマイチ切れがない)ギャグなんかにもよく笑ってくれる。対話に飢えていた僕はとにかくすごく嬉しかった。……そして、たらればなんて意味がないことは承知の上で、もし僕が対話に飢えていなかったら彼女と付き合う決断をしただろうか、なんてことも考える。たぶん僕は怖いのだ。彼女の好意を失うことが。失ってからの落差が。落差をあらかじめ埋めたくて、彼女への失望にダメージを受けたくなくて、僕は彼女への期待をずっと抑圧し続けている。だから、僕は自分感覚にも全幅の信頼をおけない。

そのうちお腹いっぱいになった僕は、それでも彼女に優しくし続けるだろうか? しないとすれば、この気持ちは本当に好意だろうか?

いまこんなことを考える必要はない、と僕の中の誰かがこのあたりで議論を打ち切って、また彼女の仕草に神経を集中させる。

彼女はさむいよーお願いだから気温上げてよーと独り言みたいに言って、僕は苦笑しながら神様にお願いしてるの? と聞いてみる。

「違うよ。増田君に頼んでんの。お願いだから気温上げてよ」

表情を見ても本気か冗談か分かんなくて、僕は思わず笑いながら頑張るよ、と答える。もう一度ぎゅっと手を握る。

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