いつもチラチラと俺を見てくる妹がいる。俺の容姿を気に入らない妹はいないと思うが、とくに幼い妹はいやらしい視線で見ていることに気付かれまいと小細工をする。そしてそれが俺に見抜かれていることを知らない健気な動物だ。
正視する度胸はないが、それでも俺の姿をまぶたに焼き付けたい気持ちには逆らえないみたいだ。妹は窓を見ていたかと思うと、俺の後方に座っている別の人に視線を動かす。その視線の軌跡の途中にいつも俺の顔を置くのだ。本当は俺だけを見たいのに、あたかも作為なくたまたま俺の顔が視界に入っただけのように装う。
本当はもっとじっくり俺を見たいくせに気弱な性格が出てしまうのだろう。だが、弱気な妹でも、強気に押してくる妹でも、俺を手中におさめるのは無理だ。妹は、いつか俺をデートに誘い出したいなどと分不相応な考えを抱いているのかもしれない。俺を見て、恋愛感情を持たなかった妹はいないから仕方のないことだが、やがて報われぬと知ってしょげかえる姿が今から目に浮かんでしまう。
妹の視線の動きを掴んでじっと見つめ返し、笑みを浮かべると、どぎまぎして頬が紅潮するのが見てとれた。やましい気持ちが露呈したばつの悪さを感じ取ったのと同時に、俺が妹に興味があるなどと勘違いしてしまったのだろう。俺は何の気もないのに、可哀想な妹だ。俺と瞳を合わせられるだけでも貴重な瞬間だったと今頃何度も反芻しているにちがいない。
ジタバタせずに、お縄につけ。