2008-12-09

風呂掃除

風呂掃除をしてたら、三歳になる息子のタケシが風呂場へやって来た。

浴槽に入って風呂掃除してるオレを、風呂場のドアのところから見つめている。

「濡れるからあっち行っとけよ」

浴槽を磨いた後、浴槽についた泡をシャワーで流す。

浴槽に当たって飛び散るしぶきが冷たい。

もう少しで泡が流れて掃除は終了というところで、急に腹が痛くなった。

どうも浴槽を洗っている時に、無理な体勢をしすぎたらしい。

日ごろの運動不足も祟って腹筋が、つったようだ。

「あいててて・・・・腹が痛い」

その場にうずくまり、痛みに耐えてしばらくじっとしてたら、ようやく腹筋の硬直は落ち着いてきた。

風呂掃除を終えてドアを出ようとする。

いつの間にか、タケシはいなかった。

と、思ったら代わりに嫁がドタドタと走ってやって来た。

「なーんだ、大丈夫じゃない。ビックリした」

「なーんだって、なんなんだよ」

「タケシが台所に走って来て、『お父さんがお腹痛い』って言って泣いてたから、ビックリして走ってきたのよ。」

嫁の言葉に、今度はオレがビックリして嫁の後ろを見る。

嫁のスカートをぎゅっと握って、タケシはボロボロと涙をこぼしていた。

腹筋がつって痛がっているオレを見て、タケシは心配して嫁を呼びに行ってくれたらしい。

オレはタケシの頭を撫でて、ぎゅっと抱きしめた。

大丈夫、もうお腹痛くなくなったよ。ありがとう、タケシ」

それでもタケシは、泣きじゃっくりで体をひくひくさせながらしばらく涙を流していた。

「私が腰が痛いとか言っても何もしてくれないのに、ほーんとにお父さんは愛されていますねえ」

嫁が捨てセリフを残して台所へ去って行く。

オレはタケシの頭をもう一回くしゃくしゃと撫でた。

いつまでオレを好きでいてくれるかはわからない。

空気の読めない、コミュニケーションもロクに出来ない、使えない会社員

いつの日か、そんな本当のオレを知ったら、子供はオレの事を嫌いになるのかもしれない。

だけど、もうしばらくは、コイツのために頑張らないといけないなと思った。

  • もの書き志望です。褒めてもらってちょっとてれてます。 ラノベ文体は好きじゃないんだけど、まだ自分の文体というものが固まっていなくてどうすればいいのか試行錯誤しています。 ...

    • 本職ですらない人間の中にもこれだけライバルが存在し得る。 それがわかっただけでもラッキーじゃない? もう怖いもんないでしょ。

    • 文体が固定してないって時点で書き方が足りない。 自分の感覚に合う話の傾向を把握し切れていない。 傾向がわからないからどのジャンルに向いているか把握できない。 このあたりだろ...

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