はてなキーワード: 近海とは
理性的なタカヤスなら或いは、と思ったのだ。残念ながらわたしの期待は裏切られた。
「ジェニファー、わからないな。どうして幼女を獲ってはいけないのか、もう一度最初から説明してくれないか」
君ともあろうものが、という目でタカヤスがわたしを凝視する。本当に日本人という連中は度し難い。
「オーケー、いいわタカヤス。まず、幼女は絶滅の危機に瀕していないというあなたの主張は認めます。確かに近年、オーストラリア近海の幼女個体数は増加の一途を辿っていることが観測されているわ。そして、あなたの国の"幼女食"が長い伝統を持った文化だということも理解したわ。その行為に対する生理的な嫌悪感は別としてね」
「ご理解いただき感謝感激。そして感情論は理性的ではないよ。生理的嫌悪感なるものは風習によって育まれるものだ。ぼくの国の諺に曰く、"所変われば品変わる"、或いは"郷に入っては郷に従え"」
「感情ね。わたしは感情論をまきちらすつもりはないのだけれど、あなた方は他国の国民感情というものをどう考えているの? 幼女食が世界中から非難されている現実を知らないわけではないでしょう?」
「そこがむしろぼくたちには理解できないんだよ。それこそ感情的にわからない。幼女は動物だよ? 動物に関する食タブーは風習や宗教の分野じゃないのか? イスラム圏で豚が禁忌になったのは不衛生だったからという説を聞いたことがある。食タブー自体は善や悪とは別問題じゃないのかい?」
本当に理解できてないのだわ。わたしは若干の感動すら覚えた。異文化コミュニケーションとはかくも刺激的なものか。
「……とても基本的なところから話してみましょう」
「それ以前に。まず、幼女は人の姿に似ている。これはオーケー?」
「オーケーオーケー、果てしなくオーケー」
わたしがもう少し不寛容だったなら、ことさら"果てしなく"を強調した目の前の男を椅子で殴っていただろう。
「オーケー。じゃあ次、人は人の姿に似たものが傷つくのを嫌がる、これはオーケー?」
「うん、条件付きでオーケー」
「その条件は何?」
「中国人はサルを食べる。かわいい猫も食べる。韓国人は人類の友たる犬を食べる。これはオーケー?」
「話がそれるからそのテーマは次の授業で取り上げましょうね、タカヤス坊や。で、幼女食に嫌悪感を覚える欧米人がいることは想像できるのよね?」
「理論的には存在が予想されるね。欧米人は幼女食が文化として根付いている極東の一民族の存在を理論的に予想したりしないのかい?」
「予想するまでもなく実例として大量に現れているから、理論の方を合わせようか考えているところよ」
天の父なる神よ、日本人がここまで幼女食を擁護するのはどうしてなのでしょうか。わたしには幼女がそこまでして得たい魅力的食材だとは到底思えません。日本人はみんな幼女を食べないと入会できない秘密の宗教団体にでも入っているのですか?
「逆に聞くわ、あなたたちはどうしてそこまで幼女食を文化として守ろうとするの? 天然の幼女の体が生体濃縮で汚染されていることは知っているのでしょう? 高濃度の萌えを溜め込んだ幼女は食用には全く不向きだわ。味も特に美味しくはないというじゃない。どうして? なぜ幼女なの?」
「そのアプローチも君たち欧米人が好むやり方だね。でも、それは幼女漁を全面禁止する理由にはならないよ。分かるだろう? 汚染されていようが不味かろうが、ぼくらの文化なんだ。きみたちにそこまでして否定されるいわれはない。ぼく自身、幼女を食べることはほぼ全くと言っていいほどない。でも、長年幼女を獲って暮らしてきた人たちに"もう幼女を殺してはいけません"と告げるのはどうなんだ? きみらの文化にそれをする権利を誰が与えたんだ? きみたちの神様か? それは八百万いるぼくたちの神様とどっちが偉いんだい?」
「でも、幼女には知性があるのよ!? これは実験で証明された事実なのよ!? それでもあなたたちは幼女を殺して平気なの!?」
「幼女は幼女で人間じゃない。きみたちがそこまで幼女に感情移入する理由がぼくたちにはわからないんだよ。本当にわからない。何故だ? 幼女はどこまで行っても幼女じゃないか。賢いといったって所詮は幼女の浅知恵だ。その程度の存在を政治圧力をかけてまで保護しようとするのはどうしてだ? 世界中の幼女には神性でも備わってるのか? きみたちは幼女の背中に光り輝く十四枚の翼でも見えるのか!? 欧米人はみんな幼女を崇め奉る秘密の宗教団体にでも入ってるのか?」
わたしとタカヤスは何ともいえぬ渋い顔をして黙り込む。 TV からは幼女保護過激派団体が日本漁船を襲撃したというニュースが流れる。抗議行動に参加した女優のコメントが字幕付きで放映される。
『殺される理由も、捕えられる理由もありません。幼女とツンデレは多分この地球上で最も心優しい動物の1つです』
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第二回ファック文芸部杯 参加作品 (g:neo:id:xx-internet:20071203:p1)