以下のような内容の創作漫画があった。
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ボーナスが出たと喜び、何に使おうかと思いをはせる主人公。
次の瞬間冷静になり、奨学金の繰り上げ返済のページを開いて30万円を繰り上げ返済する。
奨学金の返済はまだ残っており、事実上貯金がない自らの現状を嘆く。
高校時代、ほぼ親の言うことに従い、何とかなると思って奨学金を借りたことを思い出す。
国立に行き、実家から通い、バイトもして、学費分が大体支給されたら途中辞退もしたのになぜこれほど借りたのか疑問に思う。
利息が付くことを恨み、過去の自分の行動を後悔しているうちに、十年も二十年も奨学金を返済することに絶望する。
繰り上げ返済をして少しでも返済期限を短くすることを決意し、翌日も仕事に励む。
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注意:
どのような条件の奨学金を
総額いくら借りたか、
月々にいくら返済しているか
などは作中にて明示されていない。
批判されている点(自分が思ったことと概ね一致する)は大きく3つ。
・利子があることを以て奨学金批判をしている点
奨学金の利子はほかの学生ローンに比べて良い条件であるにも関わらず、
利子がある点だけを以て批判している(ように受け取れる)内容。
・借入金額、返済金額を推測してもそれほどで困窮していると思えない点
国立大学なら入学金と4年間の授業料で250万円。仮に生活費のために年間10万円追加としても300万円程度。
文系私立大学の学費のみの金額以下、理系私立なら学費だけでその1.5倍かかる。
一方で、主人公は新卒一年目の賞与で手取り30万円以上のボーナスが出る企業に勤めている。
月々の返済金額もそれなりになると推測される。
ほぼ確実に十年以内に返済できる計算。
・無理に繰り上げ返済をしようとしている点
日本学生支援機構の奨学金の場合、一般的な学生ローン(どころかほかのローンと比較しても)低金利な上、
減免などの様々な有利な制度があるにも関わらず、「とにかく利子を払いたくない!」という一心で、
ボーナスが出たにもかかわらず我慢をして、繰り上げ返済をする主人公の非合理性。
日本の奨学金制度、大学の学費には様々な課題があることには異存ない。
しかしこの漫画は具体的な制度には踏み込まず、
利子の有無などの表層的なことしか取り上げずに奨学金制度を批判している。
また主人公の返済計画も合理的とは言えない面が目立った。
批判を行うときは、現実に即したあるいは事実に基づいた、
具体的な指摘を行わないと賛同を得られず、批判をされ返されるということを改めて肝に銘じようと思う。