欠けたものが埋まっていく音が聞こえていた。
「歌うのが好きだったんじゃないの?」
「うん、でも、もういいの」
少女は笑う。
僕はどんな表情も浮かべることができなかった。
君が好きだったもののことを、君がそれを失ってしまったことを
僕はいつか埋めることができるのだろうか。
あるいは、君は本当にそのことを望んでいるのだろうか。
それはただの紛い物で、君が望んでいたものの代わりになんてならないかもしれない。
でも僕は君に欠けてしまったものを作り続けている。
欠けたものが埋められていく音がする。
氷が溶ける音が、不規則なリズムを奏でている。
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