2013-07-27

エル

 欠けたものが埋まっていく音が聞こえていた。


「歌うのが好きだったんじゃないの?」

「うん、でも、もういいの」


 少女は笑う。

 僕はどんな表情も浮かべることができなかった。


 君が好きだったもののことを、君がそれを失ってしまったことを

 僕はいつか埋めることができるのだろうか。

 あるいは、君は本当にそのことを望んでいるのだろうか。

 それはただの紛い物で、君が望んでいたものの代わりになんてならないかもしれない。

 でも僕は君に欠けてしまったものを作り続けている。


 欠けたものが埋められていく音がする。

 氷が溶ける音が、不規則なリズムを奏でている。

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