僕は不公平な小説を書いている。努力をしても報われなかったり、努力せずとも報われたりする、そんな夢みたいに不公平な小説を書いている。どこまでも公平なこの世界で。
世界はどこまでも公平だ。努力をした分だけ報われる。がんばったやつの総取りで、総取りしたやつはさらにがんばり差を広げる。僕たちとの差を。努力してないやつとの差を。
この世界にまったく努力をしてないやつなんて多分いない。そんな賢く生きられない。たいていのやつは努力をし、挫折をし、また努力をする。だって世界は公平だから。寝る間も惜しんで努力をする。でもそんなの他のやつらもやっている。やってないのは落ちこぼれる。やってるやつすら落ちこぼれる。
成功するやつはほんの一握りだ。努力をしてる人間が少ないからじゃない。用意された席が少ないからだ。テーブルに座って優雅にパイを食べられるのは死にもの狂いで努力をした、ほんのひと握りの人間だけ。いくら努力をしてもテーブルから落ちたパイのくずを拾って食うしかないやつがほとんどだ。でも誰も文句はいえない。だって成功したやつらは誰よりも努力をしたってことで、成功してないやつらは努力が足りないってことなんだから。
毎日寝る間も惜しみ体をこわすまでやったところで関係ない。結果として出てるんだ。努力が完璧に比例するこの世界で結果が出るというのはそういうことだ。いくらがんばったところで、結果が出ないのならば、それは努力が足りない。単純に。完全に。以前テレビで成功した化物共の生活を見たことがある。僕の1日が30時間あったとしてもまるで勝てる気がしなかった。そういうことだ。
だから僕は不公平な小説を書いている。努力をしても報われなかったり、努力せずとも報われたりする、そんな夢みたいに不公平な小説を書いている。でもやっぱり世界は公平だ。僕の小説は売れない。