台所でチロチロと火が出てる。
ご主人様は、まだ気がついていないみたい。
火が出てるよ、って教えてあげたけど、あまり気にしてくれてないみたい。
ちょっと火が大きくなってきたみたい。
ご主人様も気づいたみたいだけど、まだ大丈夫だと思ってるみたい。
早く消したほうがいいよ、って教えたけれど、お家の増築に夢中のご主人様には、僕の言ってることは聞こえてないみたい。
どんどん火が大きくなってきた。
でも、ご主人様は、別荘建てるのに夢中みたい。
早く消さなきゃ危ないよ、って言ってるのに、「うるさい」ってご主人様は怒るだけ。
火が台所から出て、周りに燃え移っちゃった。
ご主人様、燃え移ったところに水をかけたけど、台所の火は消さないみたい。
台所の火を消さないと駄目だよ、って言ったけど、「そんな声は聞きたくない」っていうばかり。
もう台所は燃え尽きちゃった。
ご主人様は、火を消すのに夢中みたい。
もう逃げないと危ないよ、って言ったのに、「とにかく消さなきゃ。じゃんじゃん水と消火器を買ってこなきゃ」って言うだけで、僕の言うこと聞いてくれない。
お外から、「何を言っても通じないよ。早く逃げなよ。」って声が聞える。
お家はもう殆ど焼けちゃった。
ご主人様も燃えちゃった。
僕の周りも火で包まれちゃって、とっても熱い。
僕も一緒に死んじゃうのかな。
そうだね、カラスさん。あのとき言ってくれたように、自分だけでも逃げれば良かったんだ。
でもね、出来なかったんだ。だって、僕は、カナリアだから。
籠で飼われたカナリアだから。