あの人からの電話に誘われて、大学時代の仲間の集まるお花見へ。
土曜日の桜は満開で、酔っぱらいが騒ぎ、子供達はかけずりまわる。
私は携帯で話しながら、あの人を捜す。
いつもの通り言葉では要領を得なくて、
大きく手を振る動きと同期する声が場所を伝える。
ビールをどっさり追加して、私は歓迎の声に目を細める。
皆と近況の交換をして、あの人の近況を手に入れる。
でもうれしいのはたった一つの歓迎の声。たったひとつの近況。
あの人はもうかなり酔ってきて、上体を揺らしている。
ああもう全くこの人は。
背中越しに笑い話をしてこの人の振動を感じる。
私は酔っていない。ビールには酔っていない。
ただ、体温に酔っている。
なぜこの人はヘテロなのですか。
なぜ私をこの人と同性に創ったのですか。
なぜこの人を独り者のままにしておくのですか。
なぜ私は幸せと絶望を同時にずっと味わい続けねばならないのですか。
はらはら散る花びらの中で、
私の顔はほほえみ、
私の心の半分は安らぎ、
残りの半分は血を流す。