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検索を逆手に取ったメディア・ビジネスが今、アメリカで大きな羨望と非難の的になっていることをご存じだろうか。
その名は、デマンド・メディア。数々のサイトを傘下に持つメディア会社だが、そのビジネスの核心は、ネット・ユーザーがたった今、知りたいと思っている情報を探り当て、そのコンテンツをほぼリアルタイムで制作し、それをネットに上げてページビューを稼ぎ、広告でボロ儲けすること。創業から4年足らずの同社は、この手法で2009年には2億ドルの売上げを稼いだと言われる。
仕組みはこうだ。
同社が開発した独自のテクノロジーがミソだが、それによってまず現在ネット上で話題になっている事柄、キーワードが抽出される。これに基づいて、競合他社の動きも考慮して予想広告収入をはじき出し、さらに独自のアルゴリズムによって、コンテンツを制作するにふさわしいテーマが吐き出される。テーマには、検索ですぐにひっかかり、検索結果では上位に表示されるような目立った表現が盛り込まれている。
さて、いったんテーマが決まると、デマンド・メディアは「コンテンツ募集」というかたちで告示する。同社のデータベースには、何万人ものフリーランス・ライターやビデオ制作者が登録されていて、彼らは自分に合ったコンテンツを見つけると、さっそく手をあげて執筆や撮影、制作に取りかかる。
制作されたコンテンツは、他サイトのコンテンツからの無断流用がないかどうかを調べるために、これまたコンピュータにかけられ、合格すればデマンド・メディア傘下のサイトに掲載される。これが一連の流れである。
(中略)
1日にサイトにアップされるテキストやビデオ・コンテンツは、何と4000件を数える。これもファストフードならぬファストコンテンツとでも呼ぶべき量産体制の賜物だ。この体制を支えるライターやビデオ制作者は、同社のサイトで常時募集している。
フリーランサーたちは、テキスト記事では15ドル程度、ビデオ制作では30ドル程度の報酬を受けている。失業者があふれる昨今では、珍しくペイされる“開かれた機会”を提供しているということにもなるが、ペイの水準はよくてファストフード店員並みか、それ以下。一時ユーザーが生み出すコンテンツ(UGC)という動きが話題になったが、デマンド・メディアは、そんな悠長な善意に頼るのではなく、もうスウェットショップ並みのコンテンツ工場なのである。
(中略)
こうした人気に羨望が集まる一方で、批判も決して少なくない。批判の中心は、他でもないコンテンツの質である。ライターやビデオ制作者はプロ級の人材とは限らず、「数打ちゃ、当たる」式のデマンド・メディアの方法に則って、ともかくコンテンツを量産し続ける。あまり質の高くない、使い捨て的ファストコンテンツで収入を稼ぎまくるというアプローチに、メディア・サイトのかたちをとった「あこぎ」な商売だという非難は多い。