2010-02-10

荒山徹、あるいは民族憎悪ヘイトスピーチの話

荒山徹という作家がいます。

朝鮮が悪役で、妖術で日本から人や物を奪ったり、豊臣秀吉死体を発掘して首を切り落としたり(気持ちはまあ分かるが)、日本を征服しようとしたり、天皇家を廃絶しようとしたり、基本的に中国が中心・朝鮮が半周辺・日本が周辺という認識に立って日本馬鹿にしたり、そんな感じです。

日本は侵略者である場合もありますが、基本的に独自の技術文化を持っていて、中国に負けない(国力は全然違うけど、元は日本の侵略を持続できなかった)し、朝鮮より強く進んだ国として描かれています。豊臣秀吉は明中心の世界システム論を否定すべく軍事外交し、朝鮮には重きを置いていない日本統一覇者で、伊藤博文ロシアに対抗すべく朝鮮を上手に経営しようと腐心する高級官僚です。

よく訓練された読者は「ああまた徹はじまったな」で済んでしまうのですが、おそらく彼の作品が韓国北朝鮮に輸出されて、洒落の分からない人が読めば『ヘタリア』の時みたいに外交問題になると思います。「朝鮮馬鹿にして日本自尊心を高める、ヘイトスピーチでなくて何だ、民族的敵キャラである豊臣秀吉伊藤博文を評価するな、これを読んで馬鹿日本人民族憎悪を高めたらどうする」と。

そう言われた時に我々よく訓練された読者はどう返せばいいのか分からない。「洒落の分かる人だけ分かればいい」「面白ければいい」「読めば荒山徹民族憎悪で書いているのではなく、日本朝鮮の歴史を何か新しい切り口で描こうとしているのであり、勝手民族憎悪する方が悪い」では、「洒落の分からない人を排除するのか」「面白くない人を排除するのか」「テキストは読まれ方だけが全てで、民族憎悪引き起こしたら、作者の意図はどうあれそれは民族憎悪テキストである」と返された時に困ります。

そうやって真面目な人に娯楽は弾圧されていく訳ですが、「そんな他者危害的・他者排除的な娯楽は弾圧されればいい」と言われた時に「ごもっともですが、俺たちは断固その娯楽を評価して守っていきます」以外の言葉を持たない。それでは長期的に見た時に前者が支持されて後者は駆逐される。

だが俺たちは駆逐されたくない。荒山徹面白いと思う俺たちの感覚に嘘はつけない。その感覚そのものが政治倫理的に正しくないのか? 俺たちはどうすればいいんでしょうね。

  • 表現の自由

    • ごめん、それは行政がアクセスしてこないよう法が定めているというだけの話で、民間レベルの政治的倫理的正しさには役に立たんのですよ。だから困ったなあ、と。

  • あまり感心できる反論方法ではないけど、「お前らも散々やってるじゃねえか」でいいんじゃない? 韓国には反日小説というジャンルがあるわけだし。ムクゲノ花ガ咲キマシタ、とか。

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