というフォーマットが与えられて、
『知人が「ロン毛・茶髪はサラリーマンにふさわしくない」といった。
これに対して、型どおりに賛成と反対の意見を述べなさい』
という練習問題が出された場合、果たして(a)は
(a)ロン毛・茶髪はサラリーマンにふさわしくないという人が多くいるが、経営者の立場としてはサラリーマンのこうした髪型を容認するべきだろうか。
になるだろうか。
私は、この問題が想定する(a)問題提起は「ロン毛・茶髪はサラリーマンにふさわしくないのだろうか」であると考える。
なぜなら、この練習問題では問題に答えるにあたって立場の限定は付されておらず、立場に依らない一般的・普遍的な結論を求められているからだ。
「経営者の立場としては」という留保は、知人の発言に対応していない。「経営者の立場」からの説明は(c)の一つになりうるに過ぎない。仮にあなたが「経営者の立場としては、ふさわしくない」と言えたとしても、「知人」からは「しかし労働者の立場としてはむしろふさわしい」という別の答えが成り立つ。結局のところ「ロン毛・茶髪がサラリーマンにふさわしいか」という問題には、「経営者の立場」の主張だけでは答になっていない。
本人が自覚しているように、「問題をかなりすりかえ」てしまっている。
自分で勝手に問題を設定して良いblogの類ならともかく、このように「練習問題」を与えられている場合、問に答えることが求められているのであって、問題の創作は求められていない。
したがって、この練習問題でなすべき問題提起は「ロン毛・茶髪はサラリーマンにふさわしくないのだろうか」である。
「問題を」「すりかえ」ずに書くならば、以下のようになっただろう。
(b)私はふさわしくないと考える。
(c)サラリーマンが仕事をこなす中で出会う人々には、ロン毛・茶髪はサラリーマンにふさわしくないと考える人がある程度存在する。
一方、短髪・黒髪よりそれらがふさわしいと考える人はいないであろう。
…おや、結局「経営者の立場」はどこにも出てこない。だったら問題をすり替えなければよかったのに。
経営者の立場にむりやりひっかけて書くなら、次のようになるだろうか。
(c')経営者の立場としては、あくまでサラリーマンは会社の利益のために雇っているに過ぎない。したがって、サラリーマン本人の利益ではなく会社の利益が、経営者にとってのロン毛・茶髪の判断基準となる。
そこで会社の利益という視点からロン毛・茶髪がいかなる作用を持つかを考えるに、こうした頭髪は一部の取引先に不快感を与え、取引にマイナスに作用するおそれがある。
(d)以上の理由を考慮し、…
こうして、「立場」を(c)に落とし込むならば、反対の立場からの論証も簡単になる。「労働者の立場としては、茶髪の方がやる気が出る。」
もっとも、立場を維持したままでも反対の理由付けができるようにならないと、小論文が得意にはならないと思うけれども。「経営者としても、(1)リーマン本人のやる気が向上するし、(2)仕事上のパートナーにも清新なイメージを与えることができ、取引上プラスである。」
あと、あくまで「型」の問題なので、あまり内容に突っ込むのは本意ではないが、「経営者の立場」から問題提起をしておきながら「社会人として当然の選択」という理由付けになっている点に違和感を感じた。「社会人として」というのは、むしろサラリーマン本人の道徳に訴えるものなので、経営者としての立場からの説明としては、いまいち弱い。あと、「当然の選択」などといった「当然」は、「常識」と同じく理由付けの放棄であって、おそらく、論文として評価されない。
これまでの人生においては、文章はずーっとフィーリングで書いてきたのだが、 ちょっと思い立って、システマティックに論説文を書く訓練を積んでみることにした。 次の本をテキス...
(a) ~は~だろうか? (決着を付ける問題を示す) (b)私は~~と考える。 (問題に対する自分の立場を表明する) (c)~~は~~である。 (自分がその立場をとるに至る根拠...