彼は、私が聞く限りでは相当なマンガマニアで、コミックスを全巻初版で揃えては
いちいち防虫剤を付けて衣装ケースに閉まっているというかなりのコレクターぶりで
それこそ、だいぶヲタク寄りだがかろうじて一般人側に留まっている、といった感じだ。
つい先日、会社の駐車場でその彼(k君)ともう一人別の後輩(♂)と三人で立ち話をしていたときのこと。
話の流れで、私がかわぐちかいじの「沈黙の艦隊」をだいぶ前に全巻読んだ、と言ったら二人ともえらく驚いた。
え、なんで?と思って理由を聞くと、K君曰く「内容が女性向きとはとても思えないから」だと言う。
まぁ確かに絵も劇画タッチだし、原子力潜水艦だの政治的駆け引きだの、小難しい内容だとは思うが
少なくとも私にはとても面白くて、あっという間に全巻借りて読破したので
「そうかなぁ?普通に面白かったよ?」と答えたら
「俺の回りじゃ、マンガを読む女子自体あんまいないけど、更に沈鑑を読んだとか聞いた事もないっすよ!」
と、さも珍しい天然記念物を目撃したかのような口調で私に言うのだ。
ちょっとまて、と。
そりゃぁ君の回りでは見かけないかもしれないが、少なくとも私の知ってる限りでは
当時は確か数多の腐女子の皆様が、思い思いの妄想を繰り広げた二次創作同人をバンバン出してた
結構なサークル数のマイナーメジャージャンルだった筈なんだけど…どうしてそういう
「沈黙の艦隊は女性は読まないマンガ」なんていうとんちんかんな認識に飛躍するのか、と。
瞬間、そこまでだーっと考えたけれども(多分)顔には出さずに
「まぁ私は面白けりゃ何でも読む雑食系だし」とお茶を濁して、その話はそこまでになったが
私の中の認識と彼等の認識のギャップが私にはとても面白く感じられて
彼等と別れて帰宅する途中の車の中で、この認識の違いはどっから来るのかしら?とずっと考えていた。
人は誰でも、自分の周囲の環境にある事象をサンプルに照らし合わせて物事を考える。
まぁ結局この事に関しては、K君がヲタク同人活動をやった事がないから知らない、と言うか
およそそんな人種がいる事が想像もつかないから、なのだろうけど。
つまりはその「同人活動をやった事ないのはおろか、やろうと言う事すら"思いつかない"」点こそが
どんだけマニアックなマンガコレクターで、社内ででかい声でがんがんマンガ話をしていようとも
K君をかろうじて一般人に踏みとどまらせている境界線に他ならない訳だ。
対して、ヲタク歴も年季が入っていて、過去に腐二次活動の経験もある私にとって
なんでもアリの腐女子の世界では特に珍しくもない「違う穴のムジナ」ジャンルの事ぐらい
とっくに過去の知識として当たり前に消化している訳で、悲しいかなそこんとこ彼よりも
経験上、何事もたいがい知らないよりは知っている方がいいに越した事はないとわかっていても
なんだかなぁ、と複雑な心境になってしまった出来事だった。
知ってる知識を毎日反芻! 狭い世界をより狭く! それがオタですから!
オタクとは、食性による区分ではなく、生息圏による区分なのです。