先駆者としての黒澤明には敬意を払いつつも、この人の映画を面白いと思った事が無い。映画がまだ「活動写真」「大衆娯楽」だと言われていた時代の人だ。当時の映画監督の地位なんて今とは比べ物にならない。競争相手なんて(今と比べると)居ないも同然の時代なら、ちょっと本気で取り組めば何を撮っても「斬新」で「一番乗り」が簡単に出来た。やりたい放題がそこそこ許された時代だったはず。(同じ理由で小津安二郎監督もそうだと思うんだよね。それなりにやりたいようにさせてもらえた時代であれば、今でも成功する人間は沢山居ると思う)
ただ、黒澤明というクリエイターに匹敵する人間は存在しないのかといったら、多分、全然そんなことは無いと思う。「神様」と担ぐ理由って、別に黒澤明に心酔しているからではなくて、映画界の象徴であってほしいという、もっと利己的な理由じゃないかなと思う。
文化に偉人は付き物だもんね。映画にも歴史があるれっきとした文化なんだぞと、業界ぐるみでその雰囲気を盛り立てていくために、黒澤明を利用してきたところはあると思う。