2009-07-21

苦手な同僚の話

外国から来た同僚がいる。

彼が日本に来てからずっと面倒を見ている。

彼は、ルーマニア人なのにラテン系のノリがなく、

高学歴プライドを持ち、全くジョークを言わなかった。

わたしはどちらかというと、バカで底抜けに明るい、

週末と女のことしか頭にない陽気な外国人が好きなので、

彼とは全然合わなかった。

彼が日本に来た時、外国人の同僚が集まるサークルに連れて行ったけど、

当日彼がドタキャンしたせいで、私だけが歓迎会に参加した。

その後も私だけ外国人の同僚たちと交友を深めた。

彼は、タイ人とかメキシコ人、自分よりもよく英語を話す

アメリカ人、高圧的なドイツ人には興味がないようだった。

良く良く観察すると、彼はアジア人南米系を小バカにし、

ドイツ人アメリカ人に畏怖と憎悪の念を抱いているようだった。

彼と私は同じチームなので、1年半の間ずっと隣同士で仕事をした。

彼が日本に来た頃は日本語を覚えるようにと日本語SNSを打ったり、

facebookに誘ったり、月に一度は週末どこかに誘ったりした。

でも、彼はことごとく興味がないと言った。

わからない日本語で話しかけると特に不機嫌になった。

わたしは彼が苦手だった。

彼との会話を楽しいと思ったことはなかったし、真面目すぎる彼が嫌だった。

彼が私の事をどう思っていたのかはわからない。

でも、彼は日本に来てからずっと一人で友達すらいなかった。

彼は就業時間に週3回それぞれ3時間ずつの日本語レッスンを受けていて、

真面目な彼は日本語先生が絶賛するほどよくできる生徒らしかった。

すぐに日本語能力検定4級に合格し、次は3級だねと応援した。

だけど、シャイプライドの高い彼は、職場で一言も日本語を話さなかった。

彼は英語しか話さないし、その話し方はどこか人を見下しているように聞こえた。

ほとんど誰も声をかけなかった。私か、彼の直属の上司だけが毎日声をかけた。

2年契約のうち、1年半が経ち、帰国があと半年に迫っていた。

「もっと日本エンジョイしたら?」

ふと口にしたこの一言がきっかけで彼との間にヒビが入った。

たった2行のメールに10分後、15行のメールがぎっちり詰まって返って来た。

それを2日間放置したら、返信の催促が来たので

「他の外国人たちは友好を深めているけど、どうしてそうしないのか」

「せっかく日本にいるのだから、日本語を話したらどうか」

と返した。

20分後、プレゼンができそうなくらいかっちりとした英文で

Regarding...で始まりいくつかのカテゴリに分けられ

その質問を180度包囲する形できっちりと返答されていた。

30行にもわたる大作だったが中身は読んでいない。

こう返信した。

「うまくあなたを理解できなくてごめんなさい。私が余計な事を言って悪かったわ。

あのメールは軽い気持ちで書いただけなの、ただちょっと聞いてみただけ。

ぶっちゃけどうでもいいの。だって、私はここじゃ外人じゃないしね」。

メールを返信した10秒後から彼の顔色は青くなり、赤くなった。

それから彼とは話していない。

今日の夕方の出来事。

胸がスッとした。

そしてちょっと酷かったかな、と後悔している。

わたしも外国に一人で住んでいたことがあるから、

この言葉がどれほど残酷かはわかっているつもりだ。

彼は、冷血なところはあったけど、仕事はすごくきっちりしていたし、

良いやつだった。テニスを教えたらすぐに上手くなった。

というか明日も会社で会うんだけど。

だけど、うまくいかなかった。

彼以外のルーマニア人は全員好きっていうくらい大好きだけど、

わたしは彼がずっと苦手で、それでも無理に仲良くしようとして

結局のところ酷いことを言って、彼を傷つけた。

だからといって仲良くもしたくないけど、

彼を傷つけるつもりじゃなかった。

そんなささいな心の葛藤を、誰かに聞いてほしかった。

おやすみ。ごめん。

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