桜庭一樹は鬼才ではない。奇才でもない、ましてや天才でもない。
秀才かというとそうでもない。
下積みを経てやっと世間に認知された、運のいいただの文学少女のなれの果てである。
まだ一日一冊本を読み、少女らしさの残った感性で、
世界に潜んでいる官能を、欲望を、爛熟した肉体から紡ぐ、文学少女のなれの果てである。
彼女の人生はそこそこ悲惨であったに違いない。
適当なライトノベルを書いては、売れるかどうかに頭を悩ませる日々。
ファミリーポートレイトでは、後半、作家の世界に主人公を飛び込ませる。
ここにあるのは、彼女のある意味理想的な作家像で。
自分の格好の悪い過去を、ひた隠しにしていて。
だから僕は、失われた時間のために、泣いた。
Permalink | 記事への反応(0) | 16:21
ツイートシェア