エクアドルは、2000年1月19日に、それまでの自国通貨であったスクレの使用を停止し、米ドルを通貨として流通させるようになった。ペルーとのアマゾン上流を巡る国境紛争に敗北したのが原因とされているが、ようは国内経済が破綻したわけで、米ドルをそのまま流通させる以外に、貨幣経済を維持できる状況ではなくなったのである。この辺は、ハイパーインフレの末に通過主権を投げ出したジンバブエと、理由は違うが行動は一致している。
米ドルを通貨として使用し始めた後は、親米派が政権を取り、経済の立て直しを行ってきた。そこにグローバリゼーションを原因とする地下資源の高騰の波が来て、輸出品であった石油によって、経済状況がかなり改善された。と、同時に、反米・反資本主義の動きも出てきた。というのも、エクアドルの石油産業は外資に牛耳られており、その利益の半分を外資が取っている。この外資の取り分を減らせば、もっと豊かになれると考えるのは普通の事である。
エクアドルのコレア大統領は反米左派であり、麻薬カルテルが牛耳っているコロンビアと敵対しているという点で、ベネズエラとは利害が一致している。また、ベネズエラのチャベス大統領とコレア大統領は、思想的にかなり近いようである。
ベネズエラはエクアドルに対して、コロンビアという共通の敵の存在を理由として軍事同盟をもちかけている。その軍事同盟の敵に、アメリカが含まれていたとしてもおかしくは無い。
アメリカの覇権にかげりが見えてくると、南米がきな臭くなるというのは、仕方の無い事なのかもしれない。
エクアドルの新通貨発行は、米ドルとの交換比率の変更によって、外資系企業や資産家を叩く道具として使われることになるであろう。全額を1対1の固定レートで交換した後に、ユーロや人民元といった通貨を含めた通貨バスケットから算出された、大幅に割り引かれたレートを適用し、米ドルの流出を防ぎつつ、実質的に外資や金持ちの資産を没収するのである。資本家や外資を叩き、共産主義革命を進めるという展開である。
南米はいろいろと面倒な事になっているようである。