テスト前日、昼寝が終わり7時過ぎに目が覚める。今日は未だに一口の水さえも摂取していないので、晩飯を食うために近所のスーパーへおかずを買いに行く。
スーパーへ着いた。手持ちの金を確認。三百四十七円也。納豆にも飽きたのでチャーハンを作ることにする。幸い卵はまだ家に残っているのでほかに入れる具材を考える。五十七円でスープ用の鶏の皮が売っていたのでそれのみ購入して店を出る。
米が炊けるまでだらだらした後に飯を食い、腹が落ち着いてくるまでだらだらする。脂っこすぎて鳥の皮は殆ど残した。
午後十時頃勉強を開始する。当然のようにわからない問題ばかりで段々嫌気がさしてくる。こんな問題解けるわけねーだろでも解いてる奴がいるんだよなふざけやがって。
自分の理解力の無さから段々と心に鬱々とした感情が湧き上がってきて、普段絶対考えないようなことまで明確に文章として現れる。そのうち世の中のあまねく全ての人たちに相応の理由をでっちあげて一脚で頭をかち割ってやりたい衝動に駆られる。くそっふざけやがって。頭の中で地獄の審判の様に次々と人の頭をかち割っていく。メシャッ。メシャッ。
しかしこんなことは無駄であるし僕がしたいことでもないということもわかっている。
僕は別に世の中の人々の断罪をしたいわけではないのだ。俺がこんなに苦しんでるのに誰も救ってくれないから、俺の苦しみのわかってくれないやつらを世の中から排除したいだけなのだ。
あぁ、でも、あぁ、アスカ。君だけは、君だけは僕の事を理解してくれよ。君だけが頼りなんだ。君が「あなたはそれで良いのよ。あなたはあなたのままで大丈夫。だから私の胸の中で眠りなさい」そう言って僕が安心して眠れるまで一緒にいてくれれば、僕は世界が敵だらけだろうがどうなろうが、何だって構わないんだ。だから、だから、アスカ。僕の事を救ってよ。僕のことを理解してよ。僕のことを好きになってよ!
……しかしアスカは僕の事など救ってくれも好きになってくれもしない。
クソッ、お前も僕の苦しみを僕の気持ちを理解してくれないってのかよ。僕がこんなに苦しんでるってのに、こんなに君を必要としているっていうのに、僕はこんなに君を愛しているのに僕はこんなに世界をどうにでもできる力と才能を持っているっていうのに!理解してくれないなら、支えてくれないならお前も死ね!
そうして僕はアスカの首を絞める。アスカは目だけをこちらに向けてそっと囁く。
「……気持ち悪い」
終劇
……という脳内ストーリーを繰り広げられるようになってくるということは、精神も段々回復してきている証拠である。更に追い討ちをかけるために本屋に出向き面白くも無い雑誌を読むことにする。今日は水曜日なのでマガジンが読める。マガジンの連載は相変わらずつまらない。絶望先生とエアギアくらいしかまともに読む気がしない。ほかは最早ネタとして連載してるようにしか見えない。花形とかなんで梶原一騎先生に怒られないのか不思議なくらいだ。だが、今週は福満しげゆきが読み切りを書いていたので、ちょっと読んでいて良かったと思った。
このくらいになってくると精神もだいぶ落ち着いてくる。本屋を出て家に帰る頃には開き直って「もう誰も救ってくれなくて良いですよーだ。僕はもう一人でなんとかしていきますから。一生ギャルゲのヒロインと戯れていますから!」というような気分になって、逆ギレの要領で勉強をし始める。
しかし三十分もするとまた理不尽な怒りが込み上げてきて「助けてアスカ助けてアスカ助けてアスカ」と呟くようになる。
しかし誰も救ってはくれないし、勉強をやめると単位を落とすことは確実なのでひぃひぃ言いながら勉強する。そして、こんなに苦しい僕こそアスカは救ってくれるべきだ。ということを考えて勉強をする。いつかアスカが救ってくれるはずだ。いつかアスカが僕のことを見つけてくれるはずだ。そんなことを考えて勉強をする。
かようにして夜は更け空は白み始める。