学校の帰り、駅から家まで歩いている時、私はそのオジさんに出会った。最初に背後上部で「バキッ」という音がして、その直後に「ゴッ!」と鈍い衝突音。振り向くとスーツを着たオジさんが倒れていた。オジさんの周りには枝やら葉っぱやら沢山落ちているところを見ると、どうやら木から落ちたらしい。スーツで木登りするなんて変態っぽいので、どうしようかと思ったが、唸って体を起こそうとしているので、近寄って声をかけてみた。
「大丈夫ですか?」
私の制服のスカートの中を見上げると、オジさんはキリッと立ち上がり、スーツの埃を叩いて、
「ええ、大丈夫ですとも!」
と、ぎこちない爽やかな笑顔で答えた。中肉中背、イケメンと言えなくもない顔だが、年齢は30半ばくらいに見える。十七歳なったばかりの私から見れば立派なオジさんだ。本当に大丈夫そうなので、私は軽く会釈をして去ろうとすると、オジさんは慌てて私を止める。
「ちょっとちょっとちょっと!せっかく空から降ってきたのに、なんで行っちゃうわけ?」
は?何言ってのこのオジさん、と露骨に怪訝な顔をすると、オジさんは空を指差して
「空から降ってきたの! だから君の都合の良いスペックにしちゃって良いわけ!」
と、「空から降ってくる」コンセプトの説明をし始めた。
「ヴィム・ヴェンダースの映画じゃないんだから、空から降ってきたら、普通死んじゃうんじゃないんですか?」
「普通じゃないんだよ、このコンセプトは!君は選ばれた主人公なんだYO!」
「じゃあ、その都合の良いスペックって例えばどんな感じなんですか。」
「えーと、例えば、CGデザイナーで31歳にしてすでに会社常務の高給取り、マンション持ちで料理も上手、結婚したら君は専業主婦になれるよ、みたいな」
「…私、彼氏いるんですけど。」
「え''っ…。じゃ、処女じゃないと…?」
「じゃなかったらどうなんですか?」
「失格。だって、降ってくる方も、降られてくる方も、ヴァージンじゃないとダメだもん。」
「なんで?」
「だってそうじゃなきゃオレの都合が悪いもん。」
「あれだね、空から降ってくるのは、やっぱりオジさんより女の子のほうが話進めやすいね。」
「うむ、女の子になって出直してくるわ。そしたら百合してくれる?」
「無理。」
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空降系で一番おもろい。 もっといろんなの書いてくれよ!!