2008-09-24

はてなーのアホでもわかる金融工学

概要

サブプライム問題から生じたファニーメイフレディマック国有化それから引き起こされたリーマン破綻アメリカ金融界は毎日がお祭り状態。そういった中で普通の人が抱く金融工学のイメージって言うのはもう暴落状態で、「なんか頭良い奴がクネクネして作ったけど、結局危機に陥ってしまった意味のない学問」とか「よくわかんない計算でハイリスクの金融商品を続々生み出している学問」というイメージを持っている人もいるかもしれない。

いや、そりゃあ合っている部分もあると思うけどさ。でも一応金融工学がどういった用途で使われているのかくらい知っていても、損はないんじゃないの?とか思う。なんにも知らないで批判するよりは、ある程度概要を知った上で批判したほうがなんか恰好いいのでは。

というわけで、具体的にどう役立っているのか、そしてそこから生じるデメリットはなんなのかを以下に書いていきたいと思う。ほんとにさらーっとなので、詳しく知りたい方は本なり読んだほうが分かりやすくていいんじゃないかと。

あ、タイトルにこんな挑発的なタイトルをつけた後で言うのもなんだけど、はてなーはアホじゃないと思うし、こんなんはてなーぐらいしか読まないよ。

金融工学はどんな時に役立つのか

金融工学」って言ってもその分野は様々。だけど大まかに分けてみると、以下の3つの用途に使われていることが多い。

金融商品価格付け

金融工学が一番力を発揮している分野がこの「金融商品価格付け」。ゴールドマン・サックスなどの投資銀行は、金融工学を用いることで新しい金融商品価格付けを行い、それを大量にばらまいている。

どういうことかというと、たとえば、売り手が「1年後に1万円を受けとることのできる証券」を現時点で売りたいとしたときに、一体どれくらいの価格だったら「損をしない値段」なのかを求めたいとする。金融工学を使うことで、こういった場面での適切な価格が求められるというわけ。

リスクヘッジ

通常、企業は様々なリスクを抱えている。たとえば、パンを製造している会社は小麦の価格、貿易系の会社は為替レートの変動によって大きく利益が変動するというリスクを背負ってしまう。だけど、そういったリスク金融工学を用いることで軽減できる場合がある。

わかりやすくするため、先のパン工場の例で説明してみよう。この企業は1ヶ月後に小麦を市場価格で仕入れて、一定の値段で売りたいとする。

もし市場価格が下落すれば予想を上回る利益を得るかもしれないけど、上昇したら当初予定していた利益よりも少なくなってしまう。あくまでこれは企業活動。パン工場からすればこういったリスクはできるだけ避けて、確実な利益をとっていきたい。

この場合リスクを軽減するためには、現時点で小麦の先物を一定量購入すればよい。そうすればもし市場価格が上昇しても小麦の先物価格も上昇するため、利益は相殺されて変動リスクを回避することができる。この一定量は金融工学を用いて計算される。

ちなみに、オプション先物などの派生商品が基本的にハイリスク、ハイリターンなのもこのリスクヘッジをしやすくするため。だって大きく変動すればするほど、少ない金融商品でより大きな金額をリスクヘッジできるでしょ?

純粋投資

たくさんある金融資本の中からどういった配分でポートフォリオを作ればよいのかという問題は古今東西存在していたけど、金融工学はこの問題にある程度の指針みたいなのを教えてくれる。この指針が本当に正しいのかどうかについては人それぞれ感じることがあるだろうけど、ただ変な怪しい本を買って、やみくもに投資するよりはいいかもしれない。

金融工学のデメリット

そんな様々な用途で使われている金融工学だけど、ただ一つ、そしてとっても大きなデメリット存在する。それは「そもそも前提が納得できない場合、その結論はまったく信用できなくなる」という点。

実のところ、一意的な価格にするため、そして計算上の理由から、金融工学ではいろいろと暗黙の了解を含んだいくつかの仮定をおいている。なので、金融工学を扱うときはまずこの仮定が妥当なものであるのか判断することがとっても大事。

たとえばCAPMっていう理論を推し進めると、「すべての資産を含んだ市場インデックスへの投資が一番合理的である」という結論が得られるんだけど、まずその結論に合意するためにはまずCAPM理論の前提である

  • すべての投資家が同じ情報を元に、同じ推測を行っている
  • 投資期間は1期間のみで、その間に売買を行うことはできない
  • 手数料はかからず、流動性リスクはない

や、その他もろもろの仮定を認める必要がでてくる。これらの仮定に1つでも納得いかなければ、この理論は音をたてて崩れてしまう。

そしてさらにETFやらインデックスファンドへの投資が一番だという結論に持っていくには、

という仮定にも同意しなければならない。

ETFインデックスファンドへの投資ナンバーワン。だって理論的に証明されてるし。」

とか思っているアホはとりあえずこれらの前提についてよくよく考えてみるといいと思うよ。

LTCM破綻も前提が崩れてしまった結果起こったこと。確かに理論的にいけば必ず儲かる戦略(裁定取引)を行っていたことは認めるけど、その理論には「流動性リスク存在しない」「対象資産価格変動は対数正規分布に従う」などの前提があった。それらの前提が崩れた結果、理論意味を失い、LTCM破綻してしまったのだ。

まとめ

金融工学は、「そもそも前提が納得できない場合、その結論はまったく信用できなくなる」のです。大事なことなので2回言いました。

結局エリートがどんなに高度な理論を打ち立ててしまっても、前提が崩れてしまったらどうしようもないんです。

  • 啓蒙目的なんだから、ブックガイドくらい挙げてやれよ

  • おお、僕もこうゆうの書こうと思ってました。 今回の件で金融工学があまりに安易に槍玉に挙がってるから。 金融工学を、というより確率理論をよく知っていれば、 ハイリスク・ハイレ...

    • テレビとか見ないからわからんけど、そんなに安易に槍玉に上がってるのか? 今回の話はよくあるファットテール効果だよね。べき分布をナメてるよね。って話で終わりだと思うが、そ...

      • 僕もあんまりテレビとか見ないんですが、いけだのぶちゃんを意識して書きました。 http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/s/%B6%E2%CD%BB%B9%A9%B3%D8

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