2008-08-21

どんな世界でも輝ける人は 人間の土台がしっかりできている

高い技術力を持っているのに、あと少しの山をなかなか越えられない選手がいる。そんな選手は、人にふりまわされ、つぶされていることが多い。いくらすばらしい力があっても、人間としての土台がしっかりできていなければ、本来の力を発揮することがかなわないのだ。

 インターハイの優勝経験があろうが、なかろうが、日本記録を持っていようが、いまいが、社会人になるときのスタートは同じである。指導者はスター選手でも補欠でも、人として必要なことは徹底して教え込まなくてはならない。個性を尊重するなどと選手におもねて、叱るべきときに叱ってやらないと、ただの競技バカになってしまう。環境をどれだけ整備しても、そこに心がなければ人は育たない。そのときは選手に反発されたとしても、あとできっとわかるときがくると信じて、嫌われることを怖れずに向き合うのが、指導者の役目ではないだろうか。

 世界一をめざしていても、どの競技も毎日は単調で地味な練習の繰り返しのはずだ。毎日を新鮮に感じて意欲的に取り組むには、単調なことを楽しめるよう、選手に“習慣”をつけてやればいい。

 日本代表選手を預かったときは、代表選手にふさわしい態度について、選手に考えさせ、何度もレポートを提出させた。そんな抽象的なことを聞かれても、若い選手は何を書いていいのか頭を抱えてしまう。それでも考えさせる。そして選手の態度が少しずつ変わっていくのだ。

 ソフトボールは、連係プレーの競技だから、日常から次の人のことを考えて行動できなければ、試合でいきなりいい連係などできやしない。だから、あいさつ、礼儀、気配りができる人間しつけるのは、勝てるチームをつくるときの重要な練習の一つだと私は思っている。

 最初はうるさく思われても、選手もそれが人としてあたりまえのことだとわかれば、あとはほおっておいても、自然と身につけていく。できない選手は続かない。競技生活をしっかり送り、全力でプレーして引退を迎えた選手は、皆、この狭い競技世界を出ても、胸を張って一般社会で生きていけるように育っている。

 時代が変わり、選手に求められるものも変わってきた。たとえばメディアの取材に対しても、選手はそれなりのコミュニケーション能力をつけておかないと恥をかく。ふだんから、新聞や本を読み、人と話をして、会話が成り立つだけの一般常識教養もほしいところだ。

 もっとも、選手があまりに競技以外のことに一所懸命だと、「本業をおろそかにしてるんじゃないかっ」と雷を落としてしまうこともある。指導者だって人間矛盾しているところもあるのだ。

 優等生になんかならなくていい。やんちゃでも、人に対して誠実に向き合い、自分を支えてくれる人に感謝の気持ちを忘れず、やるべきことをちゃんとやっている選手は、最後に人に助けられる。

http://www.joc-athlete.jp/interview/utsugi.html

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