2008-06-22

病室に祖母は一人、目に涙を貯めているそうだ。

足は土色になり、血圧は低下しているという。

言葉はない。

瞼はあかない。

頷く事もない。

耳は聞こえているのだろうか、

昨日僕も病室を訪れ、祖母の顔を見たが、涙はなかった。

今朝母から聞いた。

祖母が入院して2週間になる。

入院当初、夢を見ているのかだいぶうなされて、ベッドの柵に手を打ち付けて暴れていた。

まだ口から言葉を発していたけれど、唸る、叫ぶといった様で僕は正直、側で見ていられなかった。

母はその日以来、ほぼ毎日病院に足を運んでいる。

家が近いから。が適任とされた理由なのか。

娘、息子である兄弟は多いのだが、皆寄ってこない。様子を聞くだけだという。

その件も母を疲れさせていた。兄弟ってなんだろうね?と言ってた。

僕にもわからない。答えられない。

次第に祖母は昏睡状態になっていった。

僕も様子を見に行ったけれど、言葉も発さず、瞼も開かず、手を動かす事もできなくなった祖母がいた。

側で見ていたら、祖母は一番今誰に逢いたいんだろうと思った。

確実に出口のドアに向かっている道中に、

祖母は振り返って誰に逢いたいんだろうと思った。

言葉を発せられなくても

誰に今、手を添えていてもらいたいんだろう。

祖母は

あの時はごめん。

あの時はありがとう

と彼らに伝えたいはずだ。

勝手に僕は思っているだけで、全くなにも行動が出来ていない。

それでも、刻々と時間だけがすぎていくから、気持ちの整理がつかなくて、ここにかいている。

なんだか非常に情けない。


今日も病室には誰も来ない。

誰も涙を側で見る人もいない。

祖母の残された唯一の伝達方法は涙。


僕の父や母も同じ状態になった時、僕は兄弟と共に、その現実を直視出来るのだろうか、

わからない。

  • 自分が死ぬときのことは後でいくらでも考えられる。 だから今は、せめて増田がお祖母さんの手を握ってやってくれ。

  • 自分が死ぬときのことは後でいくらでも考えられる。 だから今は、せめて増田がお祖母さんの手を握ってやってくれ。

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