2008-06-10

電車での話

先日のことだ

電車の席に座って本を読んでいた。

車内はそれなりの混み具合で、席は埋まり、立っている人がちらほら。

そんな状態で電車は駅に到着、僕は駅名を確認しようと目を上げると、年配のお婆さんが乗ってきた。

周りをみても空き席はない。

仕方なしに、僕は席を譲ろうと立ち上がった。

先に言うが、僕のいい人ぶり自慢ではない。

実際、それほどいい人ではなく、毎回譲る訳じゃないんだ。

人の膝に手荷物ぶつけてくる不躾なおばさんには絶対に譲らないし、自分が疲れていたら譲らなかったりする。

駅ごとにお年寄りを捜してみるわけもなく、数駅経って目の前にお年寄りがいることに気づき、赤面しつつ、けど今更感で躊躇して譲らなかった、そんなこともある。

まぁ、そのときは、普通に元気だったし、譲ろうと思っただけだ。

で、立ち上がって、お婆さんに目配せしたら、僕の背後に飛び込んでくる者がいた。

女子高生

目敏く空きを見つけて駆け込んできたらしい。

あっさりと席は埋まり、僕は目を丸くした。

とはいえ、なんというか席を譲れとは他人に言いたくない。

譲り合いの精神は、押しつける物じゃないと思っているから。

苦笑しつつ仕方なしに、お婆さんの方を見ると、大丈夫という意味か、上品に微笑んでいる。

まぁ良いやと、諦めて、ドアの方に行き、本の続きを読み始めようとすると声が聞こえる。

僕がいた席の斜め前で並んで座っている、親子の声だ。

母親中学生くらいの娘に諭すように話をしていた。

「いやぁね、人がお年寄りに譲った席を横取りするなんて。ああいうことをしちゃ駄目よ」云々

女子高生に聞こえそうな声で非難をしていた。

一瞬カッとなったが、押さえた。

けど、イヤな気分は収まらず、僕は他の車両に移った。

だから、その後の顛末は知らない。

女子高生の機敏さと無頓着さ加減には苦笑で済ましたけど、このおばさんの思考にはついて行けなかった。

お婆さんは立ったままだ。

自分か、自分の娘の席を譲ろうとはせず、他人に文句を言う。

女子高生には聞こえただろうか。

お婆さんには聞こえただろうか。

女子高生に理解させたければ、彼女の目の前で自分の娘の席をお婆さんに譲ればいい。

そういったことを考えず、自分たちは平然とすわったまま、非難だけする。

偽善、厚顔、ああ、言葉が見つからない。

まぁ、そのおばさんにも文句を言わずに立ち去った、僕が何をいうのかということではあるのだが。

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