差し出した手にすがりつくようにして、僕は、ただ、願いを呟いた。
過ぎて行った日々の中に、僕に気付きを与えるような衝撃的な出来事など起こりはしなかった。
ただ、積み重ねた分だけ、顔のしわが増えたような気がする。
穴があき、しわくちゃになったシャツを着ると、僕はまた窓から顔を出した。
道を歩く人、車。
形成される見えない社会。
標榜される高潔な理想にそぐわない自分は、存在することが悪だと感じる。
ぞっとするような悪寒。
すぐに顔を中に引っ込めると、窓を閉め、カーテンを閉め、布団に潜り込む。
「いやだ、いやだ、いやだ、こわい、こわい、こわい、、、」
もう少しすれば、落ち着くはず。
そうだ、これはいつもの発作なんだ。
そう言い聞かせつつ、僕は再び願いを呟く作業に戻る。