またか。
俺はため息をついた。
なんどやってもビルドができない。
356行目のエラーがどうしても理解できない。
変数の宣言は間違いない。
直前の行で宣言しているから、スコープも大丈夫だ。
括弧の閉じ忘れが無いことは専用ツールで確認した。
あたりはもう真っ暗だ。
もう二日も徹夜してる。
はっきり言って、頭は昨日から回らなくなっている。
それでも画面の前に張り付いているのは、期限が迫っているからだ。
期限が迫っているというムチは、ずっと俺に緊張感を与え続けてきた。
だが、体は疲労に対して従順だった。
気がついたときにはもう、俺の船の大半が破壊されていた。
ここでキャンペーンが終了した。
逆転をかけて、競技用AIの最終調整をしていたがついに間に合わなかった。
敵AIが操作する宇宙船の攻撃を受け、俺の船はすでに沈没していた。
このキャンペーンを勝ち抜いた8名のシステムエンジニアに次の予選会場の場所と開始時刻が告げられると、会場からあっというまに人の気配が消えていく。
俺はつかれきった体を横にしながら、機材を片付けていく他のプレイヤーをぼんやりと見つめていた。
敗因はなんだったのか。
旧式のTHzにも満たないCPUを使ったのがいけなかったか。
画面の解像度も低いし、ハードディスクのシーク速度も足りてない。
他のプレイヤーを見ろ。
俺のおんぼろPCでどうやって勝てというのだ!?
それをうまく組み立てられなかった自分のふがいなさをどうしても認めたくなかった。
挙句の果てには、キーボードの触り心地が悪かったのではないかとさえ、思えてきた。
だめだ。
ここに居たら、いつまでも変なことばかり考えてしまう。
俺は逃げるように会場から機材を運びだし、車に積み込んだ。
外は真っ暗で、頬をなでる冷たい風が気持ち良かった。
今頃になって、いいアルゴリズムを思いついた。
俺はぷっと思わず吹き出してしまった。