2007-07-14

宮崎駿ル=グウィンについて語る 1996

宮崎 -今みんなで共通の話題になっている本は、何かないの?

中村 -この前の合宿で『ゲド戦記』の第4巻について、ずいぶん議論したんですが・・・

宮崎 -聞いただけで寒気がするよ(笑)。『ゲド戦記』の4巻目は読んでないんですよ。4巻目が出たと聞いた瞬間に、絶対読まないって決めてた。友人が読んだというから、「バカだなお前」って言ったら、「やっぱりバカだった」って(笑)

久保 -それは何故ですか?(笑)

宮崎 -だって、3巻目までは物語だったはずでしょ。多分その後書こうとすると、物語じゃなくなるよね。違う?ル=グウィンフェミニズム運動でいつも槍玉にあがっている人だから、多分罪ほろぼしに書いたんだろう、という気がした。

拓弥 -まさに、ル=グウィンは後書きでそんなこと言っていました。

宮崎 -そうですか。だから、なんでそんなことして書くんだろう、ってね。僕は4巻目はくだらないと思うんですよ。読んでないのに言ってるけどね。3巻目まで終わってるのになんで書く必要があるんだろうと思いました。「白い手のテナー」で、いいじゃないねぇ。

中村 -そうですね。(笑)

宮崎 -それがババアになろうが何になろうが、そんな事は当たり前のことでね。亭主がくだらなくなろうが、そんなこと知ったこっちゃない。まぁそんな話はどうでもいいや。

拓弥 -宮崎さんはル=グウィンがお好きだと聞いていたんですが・・・

宮崎 -ル=グウィンは、断片はいいものを持っている人だと思うけれど、まぁ『闇の左手』なんかでも、本当の事を言うと、もういいよ、という感じですね。しんどいです、読むのが。アースシー魔法使いをやってるほうがいいんじゃないのかな。僕はそう思います。あと、短編でときどき面白いものにぶつかることがあるんだけど、特に好きな話かといったら、そうでもない。面白い話もあるんだけれど、僕自身は、やっぱりアースシー魔法使いの話が一番面白いな。がっかりする人もいるかもしれないけど。

中村 -平山君、言っといたほうがいいよ(笑)

平山 -ああ、がっかりしてます(一同笑)。

宮崎 -彼はル=グウィンのファンなの?そうだね、ハシバミの実の殻に蟻が字を書いているのを解読するという話があったでしょ。

平山 -はい、ありました。

宮崎 -あそこら編なんかは、どきっとして、すげえなと思うんだけど、そのあと続かないんだよね(笑)。その後読んでくと全然違う話で、もういいや、っていう感じで。

平山 -『コンパスローズ』の冒頭のところですね。

宮崎 -冒頭のその瞬間だけ、ものすごく興奮したんですけど、その後が続かないんですよね。

宮崎駿インタビュー , Juvenilia 32 東京大学児童文学を読む会1996駒場祭号別冊

ダンボール箱の中から発掘されたので、ル=グウィンに言及している部分だけ貼っときます。

学生の前で、ル=グウィンを素直に褒めらない宮崎駿(笑)

世界一早い「ゲド戦記インタビュー(完全版)

http://www.ghibli.jp/000283.html

もどうぞ。

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん