私の母がそうだった。
母が亡くなったあと、父がぼそっと漏らした。
父が母と出会ったころ、父にはずっと片思いの相手がいたが、その思いは成就せず、たまたまいい雰囲気になった母と付き合ってそのまま結婚したらしい。
父は、今もその相手のことをときどき思い出すと言った。
母のことを愛していなかったわけではないが、その相手は特別だったと。母にはそういう気持ちは起こらなかったと。
その相手の写真も見た。父と母が出会った会社の人。たしかに笑顔は素敵だが、悪いけど、ぜんぜん美人じゃなかった。ちょっと太ってるし。
まったく信じられない話だった。
母はすらっとした美人だったからだ。カッコいいとはお世辞にもいえない父と、なんで結婚したのか不思議に思うくらい。
母は、私を産んで育てている時も、私が大人になってからも、いつもスタイルには気をつかって、決してメイクにも手を抜かなかった。
あんまり裕福ではない家庭だったのに、ファッションも工夫していて、伯母さんにもらった服とか古着を上手にアレンジして着こなしてた。
それもこれもすべて父のためだったのに。父は母を見ていなかったのだ。
父にとって、当時の母は「高嶺の花だった」と言った。それが何かの間違いで「たまたま付き合えて」、そのまま当然の流れのように「結婚した」。
父にとって、ずっと母は現実のものではなかったのだ。母の人間的な部分を何一つ父は理解していなかったのだと思う。
父のことを話す時の、母の笑顔が思い出される。
それでも母は父を愛していたし、愛されていると思って死んだ。ひどい裏切りだと、父を罵った。
そんなことをなんで娘に言うんだって、私は泣いた。最初は冗談半分で話はじめてた父も、すっかり黙りこんで、畳ばっか見てた。
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