夢を見た。
十年前初めて会った時にちょっと好きになって、その後会うたびに好きになって。でも彼女いるからそっとしていたら、その彼女と結婚して。でも結婚して四年たった去年から、また私と二人で会うようになったFくんの夢だ。
夢の中で、Fくんと例の展覧会に行く約束をしている。でも展覧会に向かう道の途中で迷っていたら、同じように迷っているFくんに会った。二人で迷っていると、おばさんが道を教えてくれる。教えてくれたのは、暗い神社の階段に続く不気味な道だった。Fくんと一緒に不気味な神社を通り抜け、不気味で狭い石の階段を降りていく。道には蜘蛛の巣がはっていて、私は手で払いながらFくんと歩いていく。階段の下に何が見えたのかは分からない。結局展覧会には行かれなかったのじゃないかと思う。
そんな夢から目が覚めた昨日の朝は、夕方にFくんと例の展覧会に行くために待ち合わせしている日だった。
Fくんと会えるのはいつもとても楽しみなのに、どうも気分が乗らない。準備をするのが遅れる。でも夢の中とは違って、私は迷わずに行き慣れた待ち合わせ場所──展覧会の会場に着いた。遅れているFくんを待ちながら、夢のことを思い出していた。そして、きっと今日はついに、「どこか」「不気味な場所」へ、二人で行ってしまうような気がしていた。
展覧会を観終えて、食事と飲みの後、夢の中で見た暗い神社とすごく雰囲気の似た場所に行った。
暗いホテルの部屋だ。
私がこの想いの果てに望んでいたのは、Fくんと関係を持つことだったのだろうか?Fくんはどうだったんだろう?よく分からなかったけれど、何だか噛み合わずに最終段階に至る前に途中でやめてしまった。
結婚を控えている私も、結婚している彼も、相当な犠牲を払ったし、払わせていたのに、暗いホテルの部屋でのすべてが、幸せからは到底かけ離れていた。こんな「蜘蛛の巣のはった」「暗い階段」を「一緒に降りる」ために、今までの十年間の優しい関係があったわけではない。ひどく不気味なところに行き着いてしまった。
誰かを好きになる気持ちのクライマックスが、あんな不気味なことにしかならないのならば、人を好きになっても仕方ない。
階段の下には何があったのだろう。きっと、天国は下にはないはずだ。だから、途中で止まってよかったのに違いない。そして、いつも明るい君にあれ以上暗い階段を降りることをさせなくてよかったと思う。
もうきっと道を迷うことはないだろうし、下り階段には近づかない。今まで通りたまに明るい場所で会って、笑顔とくだらない話で交わろう。──少し気持ちが落ち着いてから。それこそが、一番、この想いがかなっている幸せを感じられる時間だったのだから。
ふう。少し整理できた。もう考えるのやめよう。
たまに連絡してごはんを食べる、という間柄なら、これまで通り続けられそうですか?