2008-08-24

魔法のはなし

留学先で知り合った人がいました。俗にいう魔法が使えるその年まで僕は女性とおつきあいをしたことがなくて、たぶんその先だってずっと一人でいるだろうと思っていたのに、その人とはなぜだか自然と仲良くなりました。自分が愛の言葉を言うなんても思いもしませんでした。

散歩したのも、動物園にいったのも、お買い物にいったのも、服を選んだのも、誕生日を祝ったのも、電話でたくさん話したのも、手紙を書いたのも、写真をとったのも、料理して笑い合って食べたのも、寝坊してゴロゴロしたのも、手をつないだのも、じゃれあったのも、けんかしたのも、キスしたのも、ぬくもりを感じて眠ったのも、胸がこんなにあったかくなったのも、全部はじめてのことでした。たぶんふつうの人はとっくに経験しているだろうことを、それまでの遅れを取り戻すかのようにたった数ヶ月の間に僕は知っていきました。彼女のおかげで世界は変わりましたし、僕はやさしくなりました。だれかを愛して愛することをはじめて知りました。

彼女にはずっとおつきあしている人が国にいました。そのことは僕も知っていましたし、彼女だってちゃんと考えているだろうと思ってました。しかし、「彼のことが忘れられない。彼のことがやっぱり好きだと気づいた。」一時帰国した彼女はこういいました。そして「ごめんなさい、おつきあいできない。」と彼女は僕に一言あやまりました。

きっと魔法が使えるようになった僕の魔法彼女はかかっていたのかな、そして魔法はあっという間にとけてしまったんだ。だってそうでもなければ全部が嘘に思えて、せっかくやさしくなった僕はまたいじわるにならなければいけなくなる。いや、全部嘘でもいい。ただ、ほんの少しの間だけだったけれど僕を愛してくれていたことは本当であってほしい。それだけで僕は残りの人生魔法を使わずとも少しだけ幸せにすごせるかもしれないから。

さようなら。とっても楽しかったです。どうもありがとう。どうぞお元気で。

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