2007-09-24

反省文

母が定年退職したので、慰労もかねて、外国旅行にいった。

母が行きたいといっていた国だった。

英語の通じない国だった。むろん、母は英語などわからないのだけれど、

英語以外の外国語など、まったくもってわからないようだった。

はとくべつ語学ができるというわけじゃないけれど、

はじめての異国の街でも、ガイドブックを見ながらであれば、

地下鉄にも乗れるし、店で買い物もできる。おつりが間違っていたら、

抗議をすることもできる。

そういう世代であり、そういう性格なのだと思う。

母は異国の言葉にかなりとまどっていたけれど、

自分でも、あこがれの街で、

ちょっとした体験がしてみたかったんだろう。

買い物がしてみたい、と言い出し、

私からその国のお金を受け取って、少し先にあった店に、飲み物を買いにいった。

あっさり、ひとけた多くお金を取られた。お釣りをもらえなかったのだ。

私はそのことについて、母を必要以上になじってしまった。

文句を言うなら、外国人の店員に言えばよかったのに。

母はしょんぼりとして、ごめんなさい。ごめんなさい、と小声で繰り返した。

そして、もう何も買わないから、とも言った。

ことばどおり、母は何の土産も買わないまま、

旅行を終えた。

何度すすめても、何も買おうとしない母を、

何かのあてつけのように感じていた。

けれど今思えば、私のひとことで、ほんとうに気をくじいてしまったのだと思う。


さらに帰りの飛行機で、母は腕時計をなくした。

あわてた様子で、なんどもなんども座席のまわりを探し回る。

機材が日本に着陸し、ほとんどの乗客が降りた後も、母はまだ時計をさがしていた。

予約したリムジンバスの時間もあったので、私はだんだんとイライラしてきた。

私は聞いた。その時計、いくらなのか。と。

3,000円くらいだ、と答えがかえってきた。

母はなんでも捨てないで、大事に取っておく癖がある。

そんな安物の時計、また買えばいいのに。私はそう思った。

思っただけじゃなく、くちに出して言っていた。

母は時計を探す手を止めて、わかった、と答えた。

だいぶあとになってから、その腕時計

亡くなった祖父がずっと愛用していたものだと知った。

母の行きたかった国は、祖父の行きたかった国でもあった。

母は祖父の遺品を身につけていくことで、

祖父をその国に連れていけると、心を弾ませていたのだった。

それを知ってから、慌てて、航空会社電話をしたけれど、

あとの祭りだった。時計は見つからなかった。

私はほんとうにバカである。

以上、反省文でした。

  • お前は本当にバカだよ。 読みながら涙が出てきた。 でもそういうことを書くお前は、ちょっとだけいい奴だろう。

  • 逆に考えるんだ。「祖父は彼の国に残りたかった(残った)」と考えるんだ。 親に対して思いやりの無い行動を取った後、自分は永遠に子供なんだと痛感する。

  • http://anond.hatelabo.jp/20070924221951 こっちは検索にひっかかった。 http://anond.hatelabo.jp/20070924211422 とりあえずこっちは検索にひっかからなかった。

    • http://anond.hatelabo.jp/20070924222417 一読して創作っぽいと思ってしまうと萎えるね。みんな素直すぎ。

  • http://anond.hatelabo.jp/20070924211422 と言いたくなった。去年海外旅行に行った時も、今年国内旅行に行った時も同じことをやらかしてしまった。 離れて暮らしていれば優しくしたくなる。でも...

  • この反省を、ここだけでなく、お母さんの方にも話してあげてください。 それだけで随分とその旅行を良かったものにできるかと。 なるべく旅行の話はすること。 話を避けたくなるよう...

  • http://anond.hatelabo.jp/20070924211422 夫の趣味の模型だかを捨ててしまった妻のコピペに似てるな

  • 母親にイライラする気持ちはよーくわかる。 俺もついついどうでもいいことで喧嘩腰に怒鳴ってしまう。 でも反省してるなら、いまからでもいいからちゃんと謝りなよ。

  • 今年度 総合 タイトル ブクマ数 日付 カテゴリ 1 57 行き着けの定食屋のDQN撃退法がすごかった 1023users 2010/04/19 生活・人生 2 110 夢をあきらめないということ ...

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