母が行きたいといっていた国だった。
英語の通じない国だった。むろん、母は英語などわからないのだけれど、
はじめての異国の街でも、ガイドブックを見ながらであれば、
地下鉄にも乗れるし、店で買い物もできる。おつりが間違っていたら、
抗議をすることもできる。
そういう世代であり、そういう性格なのだと思う。
母は異国の言葉にかなりとまどっていたけれど、
自分でも、あこがれの街で、
ちょっとした体験がしてみたかったんだろう。
買い物がしてみたい、と言い出し、
私からその国のお金を受け取って、少し先にあった店に、飲み物を買いにいった。
あっさり、ひとけた多くお金を取られた。お釣りをもらえなかったのだ。
私はそのことについて、母を必要以上になじってしまった。
文句を言うなら、外国人の店員に言えばよかったのに。
母はしょんぼりとして、ごめんなさい。ごめんなさい、と小声で繰り返した。
そして、もう何も買わないから、とも言った。
ことばどおり、母は何の土産も買わないまま、
旅行を終えた。
何度すすめても、何も買おうとしない母を、
何かのあてつけのように感じていた。
けれど今思えば、私のひとことで、ほんとうに気をくじいてしまったのだと思う。
あわてた様子で、なんどもなんども座席のまわりを探し回る。
機材が日本に着陸し、ほとんどの乗客が降りた後も、母はまだ時計をさがしていた。
予約したリムジンバスの時間もあったので、私はだんだんとイライラしてきた。
私は聞いた。その時計、いくらなのか。と。
3,000円くらいだ、と答えがかえってきた。
母はなんでも捨てないで、大事に取っておく癖がある。
そんな安物の時計、また買えばいいのに。私はそう思った。
思っただけじゃなく、くちに出して言っていた。
母は時計を探す手を止めて、わかった、と答えた。
だいぶあとになってから、その腕時計が
亡くなった祖父がずっと愛用していたものだと知った。
母の行きたかった国は、祖父の行きたかった国でもあった。
母は祖父の遺品を身につけていくことで、
祖父をその国に連れていけると、心を弾ませていたのだった。
私はほんとうにバカである。
以上、反省文でした。
お前は本当にバカだよ。 読みながら涙が出てきた。 でもそういうことを書くお前は、ちょっとだけいい奴だろう。
逆に考えるんだ。「祖父は彼の国に残りたかった(残った)」と考えるんだ。 親に対して思いやりの無い行動を取った後、自分は永遠に子供なんだと痛感する。
http://anond.hatelabo.jp/20070924221951 こっちは検索にひっかかった。 http://anond.hatelabo.jp/20070924211422 とりあえずこっちは検索にひっかからなかった。
http://anond.hatelabo.jp/20070924222417 一読して創作っぽいと思ってしまうと萎えるね。みんな素直すぎ。
http://anond.hatelabo.jp/20070924211422 と言いたくなった。去年海外旅行に行った時も、今年国内旅行に行った時も同じことをやらかしてしまった。 離れて暮らしていれば優しくしたくなる。でも...
この反省を、ここだけでなく、お母さんの方にも話してあげてください。 それだけで随分とその旅行を良かったものにできるかと。 なるべく旅行の話はすること。 話を避けたくなるよう...
http://anond.hatelabo.jp/20070924211422 夫の趣味の模型だかを捨ててしまった妻のコピペに似てるな
母親にイライラする気持ちはよーくわかる。 俺もついついどうでもいいことで喧嘩腰に怒鳴ってしまう。 でも反省してるなら、いまからでもいいからちゃんと謝りなよ。
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