もうほぼ勝負は決まった。衆院選では自民党が勝つ。
菅政権は新型コロナ対応で数えきれないほどの失策をしてきたが、唯一「ワクチン接種の重要性を理解している」という一点においてのみ、野党より優っている。
菅総理は今年前半のどこかのタイミングで「ワクチンで現在の苦境を一発逆転できる」と気づいたのだろう。欧米諸国に比べれば相当遅い気づきではあるのだが、とはいえその認識は間違っていなかった。
菅首相は米国へ飛び、ファイザーの社長に直接電話してmRNAワクチン確保の確約をとった。地方自治体に対し高圧的な態度で「7月末までの高齢者接種の厳守」を迫った。無茶苦茶なやり方ではあったが、「ワクチン接種を何が何でも進める」というメッセージを発信したのは正しかった(もっと早くに気づいてたらなお良かったけども)。
その間、野党は何を言っていたのか。
立憲民主党の枝野代表は5月26日に「ワクチン打ったら罹らないのかとか、感染の広がりが抑えられるのかとか、まだわからないです」という驚くべき発言をした。これが昨年末の発言ならわかる。接種が進んだイスラエルの状況もすでに明らかになっていた5月末に、この認識はあり得ない。明らかに菅首相より理解度が低い。
安住国対委員長は5月12日に、自治体に7月末までに接種を終えるように迫った菅首相の方針を「半ば脅しだ」と批判した。これも筋が悪い。「立憲民主党はワクチン接種が遅れても構わないのか?」と勘繰られても仕方ない発言だ。1ヶ月ワクチン接種が遅れれば、コロナ禍からの解放も1ヶ月延びる。ワクチン接種のスピードは国民の命・生活に関わる切実な問題なのだが、そのことに対する感度が鈍かった。
国民民主党の大塚耕平参院議員は5月31日にツイッターで「ワクチン接種が進み始めたものの、①副作用、②変異種への有効性、③接種者の再感染等の懸念は残る。本当のゲームチェンジャーは治療薬」と呟いている。いったい何を情報源にしたらこんな誤った認識が持てるのか。繰り返すが、昨年末ならわかる。5月末になぜこんな認識しか持てないのか。諸外国の状況をみれば明らかな通り、ゲームチェンジャーはワクチンであって治療薬ではない。
立憲民主党が、まだ効果が明らかでないイベルメクチンの緊急承認を求める法案を提出したことも理解に苦しむ。これなどは、かねてからイベルメクチンを強力にプッシュしている門田隆将に好意的に言及される始末だ。立憲民主党の現状認識は、残念ながら門田隆将と五十歩百歩なのだ。
このほかにも原口一博だの中島克人だの、おかしな発言をした野党議員は枚挙に遑がない。自民党にも石破茂などおかしな認識の議員はいるが、ことワクチン接種については野党のほうが酷かった。
今年の秋までには、ワクチン接種の進展により新型コロナの感染はある程度おさまっていくだろう(喜ばしいことに)。菅首相は衆院選でその成果を訴え、「野党はワクチン接種の邪魔ばかりしていた」という印象操作に持っていくはずだ。そして野党側はそれに有効な反論ができない。事実として、野党の多くの議員はワクチン接種の重要性を菅首相ほどにも理解していなかったからだ。
オリンピックの開催前後に感染者が増えて第5波となる可能性は高いが、しかし政府はオリンピックが原因だとは断固として認めないだろう。そしていざ日本選手のメダルラッシュが始まれば、大多数の国民は盛り上がるに決まっている。朝日新聞が日本選手の金メダルを一面トップで報じれば、「朝日は五輪に反対していたんじゃなかったのか」と吉村知事あたりにさんざん嘲笑されることだろう。従っておそらくオリンピックも菅政権の致命傷にはならず、衆院選では自民党が勝つ。
自民党が衆院選で勝利する日、はてな界隈では「絶句。なぜ自民党を支持する人がこんなにいるのか理解できない」「国民はここまで馬鹿なのか」という意見があふれるだろうから、それは違うぞと今から言っておく。
もちろん自民党はコロナ対応で数えきれない過ちを犯してきた。水際対策、医療体制の拡充、困窮者支援策、五輪開催、どれも滅茶苦茶だった。しかしただ一点、もっとも重要なワクチン接種で成功した。
野党はワクチン接種が勝負所だということに気づかなかった。本来野党がすべきだったことは、政府の先回りをして「ワクチン接種が遅い」「もっとスピードを加速させろ」と尻を叩くことだった。それで勝てたとはいわないが、少なくとも政権担当能力を示すことはできたはずだ。それなのに、大規模接種会場の不備やら、接種の公平性やらを叩く方向に向かってしまい、「頑張っている政府 vs その邪魔をする野党」というお決まりの構図に自らはまり込んでしまった。それは野党支持者には響くが、選挙の行末を左右する浮動層には響かない。
平井大臣の発言なんかで盛り上がってる場合じゃないよ。このままだとあと10年は自民党政権だよ。あーあ。