楡の木を伝う点在する意識
世界中の楡の木に意識を散らして、記憶は孤立した点のように散りばめられる。でもそれらの点は、地面に張られた根を通して、どこかしらの楡に繋がっている
勿論、根と根が直接リンクしているわけではないけれど
根の触れた地面はどこかの地面と地続きだから
例えば窓辺で少女が楡の木を見遣っている
それを楡は知っている
根を通して、その記憶は地面に溶け込む。地面に溶け込んだ記憶を、どこかの楡の木が根づたいに吸い上げる
そうして記憶は楡の木を巡る
少女が優しく樹表に触れる
楡の木はそのことを知っている
全ての楡の木は記憶の点在で、全ての楡の木は少女の手のひらを知っているのだ
彼らは少し笑う
聞こえない声で