あれは、成人式を終えた後、大きな宴会場を貸し切っての同窓会だったのかな?
君は、クラスでもアゲアゲなグループがへったくそなカラオケで盛り上がる中、
不協和音のラブソング(恐らくエ○ザイル)に目をうっとりさせる女子達を尻目に、
君は、相も変わらず、自分を傷つけない優しい殻の中に閉じこもっていたのかもしれないが、
僕にはそんな君にも「何かあるかも」という期待がちらと垣間見えた気がしたんだ。
隣の卓はかわいい女の子ばかりだったな。嫌々来た同窓会だけど、もしかしたら昔話に花が咲いて、
あるいはこの中の誰かと...なんてことも考えていなかったといえば嘘になるだろう。違うかな?
でも結局君に、君が喜ぶようなことは何も起きなかった。規定の時刻になれば、友達かと思われた
相席の彼らも早々に席を離れ、君を置いていった。一人残され、「このあとどこいくー?」なんて
男女の声を聞きながら、君は何を考えていたのだろう。残ったビールを喉に流し込み、直後に
逆流してきた4000円分の食事だったものにまみれた君は「すいません、すいません」と僕に
謝りながらへらへらと笑っていたけど、本当はとても傷ついていたんじゃないのか?
女子の、汚物を見るような視線に耐えながら会場を去って行く君の背中は20歳にしてはやけに年老いたものに感じられた。
お調子者のおたけび、女子の軽蔑のまなざし、そこからくるストレスと苦い思い出...
さして仲が良かったわけでもない連中との同窓会に赴いて、これらの嫌なこと以外に何か得るものはあったんだろうか。
4000円分の吐瀉物を片付けながら、僕はそんなことを考えていた。