日本はこれに参加するべきか否かという話がでている。この協定は、EU統合のマーストリヒト条約から、貿易の部分だけを抜き出したようなモノで、関税の撤廃を主目的としている。
自由貿易を標榜する立場からは、絶賛されるべき内容である。しかし、EUの現状を見てわかるように、ドイツとそれ以外の国家の間では、貿易の著しい不均衡が発生している。日本がTPPに参加した場合、日本はEUにおけるドイツの立場になることが予想される。
TPPへの日本の参加に対して、諸国が批判的なのも、弱者連合をつくろうという話だからである。同質の国家が集まって、緩やかな経済自由化を進める事で、経済規模を拡大させ、工業を発展させて、成長をしようという話であり、そこに、日本のような先進工業国が入り込んでくると、市場を根こそぎ持っていかれるという事になりかねない。
産業の促進には、労働法制や知的財産権、資本や物流の安定と信用といった、社会制度に依存する部分が大きく、関税や補助金による保護は、どちらかというと後ろ向きの制度でしかない。それらによる保護は、産業の競争力を減退させ、過保護な環境でしか生き残れない脆弱な産業へと、劣化させてしまう傾向が強い。
間違った制度を改めようにも、しがらみがあってなかなか難しい以上、外圧を利用してというのは、当然考えられる手段である。自国の産業を強くする為に諸外国は必死になって手段を模索しているわけである。
日本の立場としては、いずれ参加しなければならないが、直ちに参加しなければならないという話ではない。TPP参加を前提に、国内の脆弱な産業を鍛えなおした上での参加という話に持っていくべきであろう。
とりあえず、アメリカが工業国として立ち直るには市場が必要であり、現状のTPP参加表明国は、すべて、アメリカ製工業製品の市場になると考えるべきである。アメリカに工場を進出させている所はそこからの輸出が有利になるというわけで、後進国・中進国に進出するよりもマシな投資になる可能性がある。
ただし、工業立国を狙うならば、3年や5年で壊れる製品を関税撤廃をさせた上で代理店を置いて輸入販売させるよりも、20年持つ製品を個人輸入させた方が、インターネット時代にはふさわしいと思われる。前者の考え方は実利を取る考え方で、後者の考え方は名誉をとる考え方とも言える。成長至上主義ならば前者が正しく、成長には限界があるから細く長くが良いというのであれば後者が正しい。どちらも正しいのが難しい点である。