ある日、アイビー・リーという名のコンサルタントが、ベツレハム・スチール社社長、チャールズ・シュワブと面談していた。リーは、シュワブに自分のコンサルティング会社のサービスの概略を説明し、このように結んだ。「弊社のサービスをもってすれば、より良い経営ノウハウが得られます」
「バカらしい」シュワブは言った。「経営ノウハウを知っているだけでうまく経営できるものではありませんよ。我が社にいま必要なのは、もっと”知ること”ではなく、もっと”行動すること”なのだ。”知識”じゃない。”行動”なのだよ!我々はどうすべきかとっくに知っていることをビシッと徹底させるなにかを君が教えられるなら喜んで耳を貸すし、お望みの代金をお支払いしますよ!」
「わかりました」リーは答えた。「20分いただければ、少なくともあと50%はあなたの行動を引き出す方法を教えてさしあげられます」
「いいだろう」シュワブは言った。「さっそくやってもらおうか。電車に乗り遅れるわけにはいかないから、あと20分くらいしか時間がないのでね」
リーは、ポケットから一枚の白い紙を取り出し、シュワブ氏に渡して言った。
「この紙に、あなたがしなくてはならない最も重要な六つの項目を書き出してください」
シュワブ氏が書き出すのに3分を要した。
「さて」とリーは言った。「重要度の高い順に番号をつけてください」
シュワブ氏は番号をつけるのに5分を要した。
「それでは」とリーは続けた。「この紙をポケットにしまって、明日の朝一番で一番目の項目を確認して仕事をはじめてください。そして、完了するまで続けてください。それが終わったら、同様に二番目に取りかかってください。それからさらに三番目へ、という順に進めてください。帰る時間まで一日中続けてください。
ほかの仕事が一つか二つしかできないなどと心配しないでください。あなたは最も重要な仕事に取り組んでいるのです。そのほかの仕事はまだ時間の余裕があります。この方法ですべてをより終えることができなければ、ほかのどんな方法でもやり遂げられないはずです。それに、なにかメソッドがなければ、あなたはおそらく、どれが最も重要か、決めることさえできなかったでしょう
平日はこの方法で進めてください。そして、このメソッドはそれなりの価値があるとご自身で納得なさったら、部下にやらせてみてください。あなたがよいと思われる期間、試してください。その後、あなたの判断でこのメソッドの価値に値段をつけて、私に小切手を送ってください」
二人の面談はおよそ30分で終わった。それから数週間後、シュワブ氏はリーに損得の観点からこれまで学んだなかで最も儲かるメソッドであると述べたお礼の手紙を添えて、二万五千ドルの小切手を送ったのだ!五年後、この方式の大いなる恩恵で、無名のブツレハム・スチール社は世界最大の独立鉄鋼メーカーにのしあがった。そしてチャールズ・シュワブは億万長者になり、世界に名だたる鉄鋼王として知られるようになった。