「いやあ、どのファイルを残すかいつも悩んじゃうんだよねえ。」
「ふーん。」
「お前もそういう経験あるだろ?」
「全然。」
「え、じゃあ全部消してるの?」
「逆だ逆。全部残してる。」
「悩む位なら1万円出して2TBのHDD買うわ。1日に10GBのペースで落とし続けても半年はもつ。」
「見ないファイルまで残すの?もったいなくね?」
「後で『消さなきゃ良かった』と後悔する心配を一切しなくていいと思えば、半期に一度の一万の出費なんざ屁みたいなもんだ。」
「凄い発想だな。」
「全然凄いとは思わんけどな。むしろ『何を残そうか』なんて悩んでる奴は悩むこと自体を楽しんでるだろ。出す物出してスッキリして、ファイルを厳選する所までがそいつのセンズリなんだよ。本気で悩んでるんなら黙ってHDD増やしてるよ。俺みたいに。」
「そんなにファイル一杯ためたら、見たいファイルとかすぐに見つからなくね?」
「テラバイト単位でそういうファイルが溜まってくると、適当にザッピングして気分が乗った物を即『採用』、なんてのが当たり前になってくるから全然困らない。印象に強く残った物はファイル名とか覚えてるし、ローテーションのスパンが長すぎるからどのファイル開いても初見時と同じように見られる。むしろ、短期間に何度も同じファイルを『採用』するなんて俺には信じられんよ。そんな事したら速攻飽きるだろうに。」
「お前、面白みのない奴だな。」