2010-07-16

2:8の法則と1/16の風景

2:8の法則意味はよく言われるように、「物事の重要な8割は全体の2割の中に凝縮されている」という経験則だ。

ここから転じて、ライフハック本などでは「重要な2割を押さえて、8割をモノにしよう」というテクニックやアドバイスなどが紹介されている。

一見、素晴らしい法則のように見えるが、裏を返すと「些細な残り2割をモノにするためには、全体の8割を押さえなければならない」ということだ。

これは、完璧や頂上を目指す者にとって大きな壁となって立ちはだかる。

いわゆるスランプもこれで、説明できる。

標高1000mの山に登ろうとした時の速度で考えてみよう。

2:8の原則がなかった場合、1000mを等速度で移動するから、変化はなし。このときの移動速度を100とする。

2:8の原則に従うと、最初の800mは通常の4倍の速さ(400)で移動できる。しかし、残り200mの地点まで着た途端、今度は逆に通常の1/4倍速(25)になってしまう。

体感速度は400から25へと、1/16になるのである。

颯爽と流れていた風景が、いきなり1/16で流れ始めるのである。

1/16なんて普段の感覚じゃほぼゼロである。

試しに自分の持っている音楽動画を1/16で再生してみるといい(そもそも、1/16で再生できるプレイヤーなんてあるのか?)

これが、スランプの正体だ。

努力しているのに、結果に表れない」とは「今までと同じ速度で走っているのに、風景が全然変わらない」ということだ。

普通の人と一流になる人の違いは、この1/16の風景に最後まで耐えられるか否かである。

普通の人は諦めてしまう。

「800mは過ぎたし、もう十分頑張った。これ以上やってもコストパフォーマンスが悪いだけ」

一流になる人は諦めない。

「この先に必ず頂上がある。ゆっくりでも確実に進んでいる。今は耐える時だ」

誤解しないでほしいのは、決して一般の人が悪いと言っているわけではないということ。

我々はある分野の専門家でも、別の分野では素人である。

プロ野球選手の多くは、僅かな粘性を持った流体中の球体の振舞いを表す微分方程式を解くことはできないだろうが、バッターラインから打たれたボールを確実に取ることはできるだろうし、物理学科の大学教授はその逆だろう。

すべての人があらゆる事の専門家になることは不可能だし、それが自然の姿だ。

専門家になるには、1/16の風景を通らなければならない。

それだけの覚悟が必要ということだ。

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