「私も変身したい!」
ではありません。変身なら一度夢の中でしましたが、一度でもう充分。戦うのは事務所の男どもに任せておけばいいのです。
「私を女の子として扱わない!」
そうです。これが鳴海亜樹子の悩みであり、大いにに不満な点でもありました。
「そうなのよ。翔太郎はともかく、竜君まで…。」
前に、ライアー・ドーパントをおびき出すときに若菜姫に手伝ってもらったことがありました。でも一般人である若菜姫を危険にさらすわけにはいかず、別の人が若菜姫に変装しました。今にして思えば、園崎若菜は一般人どころではなかったのですが、それはまた別の話。それよりも…。
「どうして私じゃなくて、フィリップ君なの!」
そうです、若菜姫に変装したのは亜樹子ではなく、男のフィリップだったのです。そのことは今でも納得が行きません。
「でも、」
と亜樹子は事務所の隅で寝ているフィリップを振りかえります。
翔太郎は聞き込みに出かけていて、事務所には二人きり。亜樹子は寝ているフィリップの頬を指でつつきます。
「ヒゲとか生えないのかな?」
そういえば翔太郎がヒゲをそるのに顔中泡だらけにしているのは見たことがありますが、フィリップのは見たことはありません。
「胸とかもすべすべなのかな?」
すっかり寝入っているフィリップは目を覚ます気配がありません。
「ただいまー。なんだフィリップ寝てんのか。」
「あわわわ。びっくりさせないでよ!」
「やあ、おかえり翔太郎。聞き込みはどうだった?」
フィリップが起きてしまいました。残念。
「ちょっと検索して欲しいことがあるんだ。」
翔太郎とフィリップは奥の部屋に消えていきました。
「そうだ、今度変身したときに…。」