すごーくすごーくすごーーーく好きだった人を今日、街中で偶然見かけた。
もう5年も前の事。
当時私はとにかくその人の事が好きだった。
好きで好きで考えるだけで脈拍が上がって指先がびりびりするような感覚になっちゃって、これが恋の病ってやつなのね、とひとり納得したりもした。
彼はずっと年上で大人なのに、時折子供みたいに笑ったりして、それが私の「ギャップ萌え」ボタンを大胆かつ的確にプッシュするもんで、彼と話している間中、私の心はジェットコースターロマンス状態だった。(ところでジェットコースターロマンスって12年も前の歌なんですね、調べて仰天した。)
「好きです。」
そんな私の気持ちなんて彼は全然気づいて無くて、ある日彼女ができたんだと嬉しそうに私に言った。
元演劇部の根性が試される…!!とか阿呆みたいなナレーションが私の頭の中にどかんと降ってきたから、私はその声に応えるべく人生で最良の演技をした。
何て言ったのか、それは覚えていない。
気絶しそうな目眩の中で、必死に笑って必死に祝福をしたことだけは、なんとか思い出せる。
映画や小説だったら、その後にドンデン返しがあったりもするのだろうけれど、現実はそこまで甘く無い。
私はさんざん泣き暮らして、気づけば彼とは自然と疎遠になっていった。
綺麗にまとめてみたけど、ごめん嘘です。
私が勝手に彼を避けて逃げただけです、面目ない。
あれから5年経って、すっかり自分の中では消化されたと思っていたのに、どうやらそうじゃなかったらしい。
彼の姿を見かけた瞬間、鼻の奥がツンと痛んで、視界がぼやけたと思ったら、ぼろぼろ涙をこぼしていた。
部屋に戻ってティッシュ一箱使い切ったる!的な勢いで泣いて泣いて、窓を開けたら風が気持ちよかった。
そう言えば、泣いたのっていつぶりだっけ?
そう考えて出た結論に吹き出した。
私、5年前のあの時から一度も泣いていなかった。
愛する人が自分の物にならなくても、どこかで幸せに生きていたらそれでいい、なんてセリフを時折耳にするけど、多分あれは綺麗事だ。
だって私は今でも悲しいし泣けるし好きだもの。